さて、手に入れたロードマーベルを毎日眺めるおさーんであったが、そうした優雅なひとときの間も、古時計争奪戦は24時間繰り広げられている。
ロードマーベル手に入れた癖に、相変わらず別の時計を見つつ参戦の間合いを計るおさーん。

そんなおさーんが手に入れた2つ目の時計がこちら。

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うむ、やはりこれであろう。

ロードマーベル初期型「はまぐり」。どう考えてもやはりこれしかなかろう。
さて、今回のロードマーベルは初期型だがステンレスモデル。どう考えても14KGFが部材としては高価に決まっているが、それよりお値打ちなステンレス・スチールモデル(以下SS)の流通量は、今となっては少ないらしい。その理由は、察するにそもそも当時かなり高い時計なんだから、多少安いくらいならがんばって金買うわな当時の人も。ということで、結果SSは販売量が少なく、現存する個体数も少ないと。ロードマーベルに限らず、金張りがラインナップされた当時の時計は概ねこの傾向があり、今は値段が高いのは希少性のあるステンレスモデルなのだ。

しかしこやつ、見た目通り状態が悪い。動くは動くが、竜頭が抜けるので修理が必要。
文字盤はさらにアレなのだが、汚いのは部分的なので惜しいと言えば惜しい。
2個目なので、修理前提であえての入手。その代わり金の1/3以下で入手できたわけである。
まぁ高いなそれでも、ほぼジャンクやし。

これを入手した理由は以下

・どうしても銀(SS)が欲しい
・文字盤再生をしてでもピカピカが欲しい
・しくじったらドナーにするからまぁいいか

これなら思い切ってリフィニッシュできるでしょしてもいいでしょ。あと、ホントに銀は少ないのだ。
ケースは銀でインデックスと針が金というのを見たたことがあるが、やっぱオールシルバーで攻めたいでしょいわゆる白白。
もちろんキレイなものを狙えばいいのだが、とにかく高いのだ銀はホントに。現在はSSの流通量が少ないため、程度が同じならSSが圧倒的に高値になるのである。
流通量はとにかくかなーり少ない。それこそ10対1くらいで銀は少ない。もっとかな。

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もちろん、この時計は修理部品の都合で修理不可かもしれないので、捨てることになっても止む無しという覚悟付き。絶対捨てないけど。
なお、ケースはステンレスだが、植字インデックスはホワイトゴールド無垢だ。
針はどうなんだろうね?針は普通かな?
さて、お金の都合でOHとリフィニッシュは少し先になりそうだがどうなるか。乞うご期待である。

では、少しだけおさーんの知る範囲で、ムーブメントについて触れておこう。
最初から高級時計として設計・製造されたロードマーベルのベースとなるムーブメントは言わずと知れたマーベルだ。だが、ベースと言ってもかなり改良が加えられている。
まず目につくのはテンプ。チラネジのないテンプで今は当たり前だが、マーベルはまだ懐中時計の時代をひきずっており、テンプはチラネジ付きなんだよね。チラネジ無しもあるようだけど少数。
耐震装置はS-2耐震だ。最初期(多分Sマーク付きロードマーベルあたり)にはS-1耐震のものもあるらしい。さらに、角穴車や丸穴車には高級機らしく磨きが入る。磨きと言えば、テンプの裏側にも着目して欲しい。こちら殆ど見えない個所だが、こちらにも磨き加工が入っている。ペルラージュ仕上げと呼ばれるものだ。
また、内部の部品にもマーベルから数多く手が入っているらしく、いくつかはグランドセイコーにそのまま搭載されたらしい。 
なお、石数は23石で当時の最多だ。マーベルの高級版が21石だがそれよりも高級である。

この当時はまだキャリバーナンバーやケースは型番などで体系立てて整理されてはいないのだが、ロードマーベルは特別な時計としてムーブメントに機械番号が刻印される。三角の受けに刻印されるのがそれで、これ以降、高級であったり特別なムーブメントには刻印が入るようになる。なお、この個体の機械番号は6桁だが、SロードやLロードといったさらに初期のものは4桁刻印で、刻印の位置も穴車の受けになる。また、ペットネーム含むすべての刻印は塗装が施される。

このように国内初の高級時計として贅を尽くした加工がなされたロードマーベルだが、装飾的な加工だけでなく、精度もかなり良かったらしい。当時の特別製だったんだろうねきっと。

ロードマーベルは当時の感覚で相当高価な時計だったらしいのだが、これが予想を上回り売れたそうで、現在でも数多くの個体が現存する。これに気をよくしたか、高級時計がビジネスになり得ると踏んだセイコーは、ロードマーベル発売開始の2年後、精度向上に向け、これ以上ないほど贅を尽くした、グランドセイコーを発売する。

ロードマーベルの初期までのモデルは、当時高価で大切にされていたであろうことから、現在でもオークションであれば、比較的モノは出てくるため入手は可能。だが、状態はかなりの差があり、キレイなものはオークションでも高額だ。
比較的見つかると言ってもそれなりに数は少ないことから、オールドを扱うショップで見かけることはかなり少なく、あってもかなり高価で、すぐ売れてしまうのではないかと思う。というわけで、オークション以外では見かけることはかなり稀。

なお、このモデル入手時点でおさーんはある事に気付いた。
ネットでも記載を見た記憶はほとんどないので、もしかすると、最初に手に入れた14KGFは意外と面白いものだったかもしれぬ。ぐふふふふ。

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セイコー ロードマーベル(はまぐり弐号機)
製造年月:1960年9月
モデルナンバー:LM-2
キャリバーナンバー:なし(手巻)
ケースナンバー:J14038
ペットネーム:なし
石数:23石
振動数:18,000回/時(5振動)
ケース:SS
文字盤:SD