前回から引き続き、WatchHunterに掲載された販売カタログのお話の続き。

66年から製品の変遷を販売カタログ追っていくと、66年時点で既に自動巻の普及機が数多くラインナップされ、手巻は過去のものとなりつつあるのが良くわかる。その後も自動巻は飛躍的に商品を増やし、手巻はどんどん隅に追いやられていく。

ロードマーベル・キングセイコーがメインストリームなおさーんは、自動巻に全く知見がないので勉強になる。こうしてみると、GS、KSというストリームに加え、マチック・ロードマチックという自動巻の流れもコレクションアイテムとなっている理由がよくわかる。
初代セイコー自動巻から、マジックレバーを搭載するジャイロを経て、その後どんどん普及していくマチック系もかなりコアなストリームなんだね。

しかしまぁ、66年カタログに掲載されるお値段はなかなか衝撃だ。
貨幣価値が全く異なることは承知のうえで、当時の価格でGS(たぶん2ndモデル)新品27,000円(SS)。44キンクロ(44キングセイコー・クロノメーター)に至っては24,000円(SS)だと。
さらに驚くのは、マチック39石が38,000円(SS)と群を抜いて高いこと。
GSは手巻35石でカレンダー。マチックは自動巻39石でウィークデーター。ブランドより機能が優先された値付け。
ちなみに、当時の大卒初任給は24,900円らしいので、マチック39石は相当な高級品。

これなにもの?と思い確認してみると、コイツはマチック・クロノメーターだった。裏が写ってないからよくわからんかったが、ライオンメダリオンが付き、ほぼそのままGSになったアレである。そりゃ高いわ。でも、GSより高価だったとは知らなかったよ。

とにもかくにも、どのカタログを見てもビンテージマニアには垂涎モノがズラリ。タイムマシンができたら、速攻この時代に行き、定価でいいから欲しいモデルをよりどりみどり新品箱付きで買い占めたいと考えるのはおさーんだけではないだろう。

◆クルマのようにモデルチェンジで販売終息となるわけではない

カタログをみていくとわかるのだが、新たなモデルが販売されたからといって、それまでのモデルが販売終息となるわけではないようだ。新たなモデルに切り替わるのではなく、追加されるといった感じ。その後次第に古いモデルは消えていくと。これはKSもGSも同じで、例えば45KSと56KSの同時発売。その後45KSは先にディスコンとなるが、新たに発売された52KSが、56KSと共にそのまま両方とも最後まで販売され続けたなど。モデルチェンジではなく、バリエーションの追加と言った感じか。

◆コロコロ変わるブランディング

クオーツ発売までは、GSをトップとするヒエラルキーにあまり大きな変化はないが、それでもKSに自動巻がラインナップされてくるとKSの位置づけが変わる。さらにクオーツが販売されるともう大変。
それまで解かりやすく精度を価値として位置付けていたものが完全に崩壊し、GS・KSの位置づけは販売サイドもかなり苦しかったことだろう。終焉間際のカタログには「高精度時計」との文句もつくが、クオーツを前に何が高精度なのかと。さらには、クオーツにも「グランドクオーツ・キングクオーツ」といった名前だけ権威を借りてみた、なんちゃってシリーズもあったりしてもうめちゃくちゃ。

めっちゃ横道だが、クオーツに関しては、当時高級クォーツとしてツインクオーツという仕組みを持つムーブメントが採用されていたらしい。グランドクオーツやキングクオーツにも採用された仕組みで、文字通り発振器を2つ持つムーブメントらしいのだが、これに関してわかりやすく説明している動画があるのでご紹介しておく。


※このYoutuberの知名度はさほど高くはないが、秀逸な動画がとても多い。キングセイコー・マーベル・グランドセイコーの動画はマニア必見。おさーん最初にロードマーベルを買う頃は、何度観たかわからない程繰り返し観ていた。

KSについていえば、自動巻が追加されたころから苦しくなったのかもしれない。それまでは自動巻GSに手巻KSの構図はわかりやすかったが、手巻が時代遅れになるとそうもいかなくなる。かといって、自動巻にいまさら割り込む余地も無し。どうにかこうにかブランドとして暫定序列二位として販売されたようだが、このころすでに中途半端なブランドだった感が否めない。価格とモノバランスとしては抜群だが不遇なブランドなKSは、もし機械式時計が存続したとしても消え去る運命は免れなかった気がする。

◆機械式時計の終焉(主なシリーズのみ)

1974年
  • Vol.1カタログを最後に、スカイライナー(手巻)、オートマチック(自動巻)がカタログ落ち
1975年
  • Vol2.カタログを最後にグランドセイコー(56GS・61GS)、キングセイコー(52KS・56KS)、バナックがカタログ落ち。
    ※ハイエンドがクオーツで占められる中、GS・KSは「高精度時計」という表記で、カタログ上にブランド名すら記載されず、両方が区分けなく掲載されていた。正直なところ、ここまで落ちぶれていたとは思わなかった。既に誰も見向きもしてなかったか。
1976年
  • Vol.2カタログを最後に、ロードマチックデラックス及びスペシャルがカタログ落ち(自動巻)。
1977年
  • Vol.1カタログを最後に、ロードマチック、クロノグラフ、ファイブ(以上すべて自動巻)がカタログ落ち。
1978年
  • Vol.1カタログを最後に、アクタスの自動巻がカタログ落ち。ロードマーベル36000(手巻)がカタログ落ち。
  • Vol.2カタログを最後に、スピードタイマーシリーズ・ベルマチックなどの自動巻腕時計がカタログ落ち。
    ※11年の長きに渡り販売されたロードマーベル36000もついにカタログから落ちる。ロードマーベルシリーズは発売開始から20年と、グランドセイコーをはるかに凌ぐ長い販売期間を持つシリーズだった。カレンダーはおろか秒針規制すらないシンプルな手巻式腕時計が、GS・KSのディスコンから3年も延命できたという事実は、低価格であったことだけでなく、少ないながらも手巻に根強い人気があったということなのだろう。
1979年
  • Vol.1カタログを最後に、シルバーウェーブの自動巻がカタログ落ち。
  • Vol.2カタログを最後に、シャリオ及びレディース(サルビア)の手巻き腕時計がカタログ落ち。
    ※サルビアも非常に息の長いモデル、1968年にカタログに登場、そのまま11年間生産された
1980年
  • Vol.1カタログを最後に、自動巻のダイバーがカタログ落ち。
    ※ここで腕時計の機械式がカタログから消滅する。
  • Vol.2カタログを最後に、最後の機械式であった手巻の鉄道時計がカタログ落ち。 
こうして、1981年Vol.1カタログから、全ての機械式時計が国内ウォッチカタログから無くなり、セイコーウォッチの機械式時計は終焉を迎えた。(国内および海外生産のセイコー5を除く)