セイコーの歴史を遡るなかで、時計の歴史を知りたくなったおさーんは、懐中時計の世界を少しだけ垣間見た。過去記事に「懐中時計もひとつふたつ手に入れてみたい」と書いたが、実はおさーん、オールドセイコーを狙う合間に、ちょいちょいアメリカ製懐中時計の実物調査を続行していた。数ある中からアメリカ製を選んだのは、モノが多く価格も手頃で、初心者にもやさしそうと感じたからだ。
◆ウォルサムに狙いを絞る
アメリカ製懐中時計の中からは、最も規模の大きかったウォルサムというメーカーから見ていくことにした。初めて聞く名前かもしれないので、アメリカ懐中時計メーカーの代表格のひとつであるウォルサムについて少し記しておこう。
ウォルサムは、1850年にデイヴィッド・デイヴィス、エドワード・ハワード、アーロン・ラフキン・デニソンの3名が、事業を興すことから始まる。
1951年、The American Horologe Co.という社名の変更の後、The Warren Manufacturing Co. を経て Boston Watch Co.となるが、早くも経営に行き詰まり売却。その後Tracy, Baker, & Co.を経て、1857年にAppleton, Tracy, & Co.として再編される。次いで1859年に他時計会社を吸収しThe American Watch Co.へ社名変更。その後1885年に、The American Watham Watch co.となり、1907年に Waltham Watch Co.と社名を変更する。
ウォルサムは普及品からハイグレードまでフルラインで生産を行い、アメリカ時計メーカーの中で最大の生産規模を誇った。だが、その後腕時計の時代になると共にアメリカの時計メーカーは衰退。ウォルサムも1949年に破産宣告を受け、1954年に商標だけが別資本に買われる。
こうして約100年の歴史に終止符が打たれた。現在もウォルサムの名前は残るが、当時の技術や製品は全く受け継がれていない。
ウォルサムの懐中時計は何せ生産数が多いので、現在も数多くの逸品が現存し、アメリカを中心にマイナーでニッチな市場を形成している。当時日本にも代理店から輸入されており、国内で最も多く現存する懐中時計のブランドだろうと思う。
◆リバーサイド、ヴァンガードを探すおさーん
ウォルサムには数々の著名な時計があるが、有名どころでヴァンガードとリバーサイドという銘の時計から見ていくことにしたおさーん。どちらの時計も現存数が多く、見た目も派手で造りも良い。その割に現状品であればそこそこお手頃なお値段と、おさーんのようなクソにわかにはちょうど良い。
そうこうしながらの数ヶ月、それなりに知識を習得し、いよいよ獲物の刈り取りに掛かるおさーん。最初の懐中時計は無難にネットショップから買うことに決めた。素性のわからんオークションから1発目を引くのは、あまりにもリスクが高すぎる。
さて、ネットショップの中からなんとか入手できそうな懐中時計を見つけたのは良いが、時計の素性が良くわからない。これがクソにわかの悲しさよ。
◆アメリカ製懐中時計の素性を調べるには?
「よろしい、ならば購入だ!」
実はおさーん、迷ってるうちにリバーサイドを買い逃したことがある。だから今回とりもなおさずさっさと即決。こうして、おさーんが手に入れた初めてのアンティーク懐中時計はこちらドドン!。

こちらがWalthamのRiversideだ。この個体のムーブメントサイズは0サイズと呼ばれる小型懐中時計で、その大きさはオールドの腕時計とほぼ同様(29.63mm)。このサイズは当時の女性物サイズなので、良いモノでもなんとか手に入れられるお値段。つまるところ、お小遣い範囲のおさーんがターゲットにできるのは。今のところこのあたりが関の山だった。
◆入手した懐中時計の素性について

0サイズの懐中時計はちょうど腕時計に近いサイズ。カスタムケースにムーブメントを入れ、腕時計化も可能なのだそうな。国内では有数のショップである「マサズ パスタイム」では、裏スケ完全防水ケーシングも請け負ってくれる。先立つものがあれば是非にでもやりたいが、さすがにおいそれと手が出る価格じゃないのが寂しいところ。
※マサズ パスタイムより引用
腕時計と同様、かつて女性物サイズは人気はなかったそうだが、腕時計化により最近は小さいモノの人気が向上。それなりに値段が付くようになったそうだ。
◆文字盤(ダイヤル)とインデックス
それにしてもだな、腕時計と大きさ変わらんとか、ホントに懐中時計かよと。
文字盤は焼物。エナメルガラスで艶のある文字盤だ。落としたらこれ一発だが、落とせば時計自体がアウトだわな。欧州製には耐震も古くからあったりするが(ブレゲがパラシュートと呼ばれるサスペンションを考案している)、この時代のアメリカ製に耐震装置は付いていない。
◆ムーブメント
では、次にこの時計の心臓部であるムーブメントをみていただこう。実のところ、懐中時計の魅力はコレに尽きるといっても過言ではない。ネジの頭は磨き上げられ、ダマスキン模様がとても素晴らしいムーブメント。

腕時計のサイズとほぼ変わらない大きさでこの装飾。もうホント素晴らしいの一言しか出てこない。さらに、これが量産品であるという事に、アメリカの技術力の凄さを思い知らされる。
※POCKET WATCH DATABASEより引用
上記画像は、POCKET WATCH DATABASEより引用したモデル1900の該当グレード1915年のカタログだ。このサイトこんな情報も見られるのだ。なんと有益なことよ。
以下適当な意訳。
なお、1901年前後と言えば、ちょうど人工ルビーの作成方法が確立されるまさにその頃。だが、時計へ行き渡るには数年必要なはずで、ダイヤ・ルビー・サファイアとも全て天然モノ。
さて、上記カタログを見つつ、実際の時計と見比べてみる。
まず、プレートに刻印される各種記載の文字色はゴールドだ。Giltと呼ばれる仕上げらしく金メッキであろうと思われる。
カタログ表記で見ると、ダイヤモンドキャップはテンプのみと記載されるが、手に入れた個体はテンプとガンギの2か所がダイヤモンドのようだ。加えて、トレインはフルゴールドだぞこれ。うーむ、これは嬉しい素晴らしい。同じグレードでも年代の違いによって、このように装飾や装備に違いがある。ウォルサムの傾向では、販売初期にから時間がたつと装備が簡素になっていく。値段も幾分上下するが、できれば古いものを選ぶとより贅沢なものとなることが多い。
◆ケースについて

ケースはこのような感じ。Fahys社製の金張りオープンフェイスケースで、ムーブメント側の蓋がヒンジで開く仕様となっている。文字盤側はスクリュー(ネジ込み)タイプ。ケースに「Guaranteed 20 years」の刻印があることから、素材は金張りだ。
◆ウォルサムに狙いを絞る
アメリカ製懐中時計の中からは、最も規模の大きかったウォルサムというメーカーから見ていくことにした。初めて聞く名前かもしれないので、アメリカ懐中時計メーカーの代表格のひとつであるウォルサムについて少し記しておこう。
ウォルサムは、1850年にデイヴィッド・デイヴィス、エドワード・ハワード、アーロン・ラフキン・デニソンの3名が、事業を興すことから始まる。
1951年、The American Horologe Co.という社名の変更の後、The Warren Manufacturing Co. を経て Boston Watch Co.となるが、早くも経営に行き詰まり売却。その後Tracy, Baker, & Co.を経て、1857年にAppleton, Tracy, & Co.として再編される。次いで1859年に他時計会社を吸収しThe American Watch Co.へ社名変更。その後1885年に、The American Watham Watch co.となり、1907年に Waltham Watch Co.と社名を変更する。
ウォルサムは普及品からハイグレードまでフルラインで生産を行い、アメリカ時計メーカーの中で最大の生産規模を誇った。だが、その後腕時計の時代になると共にアメリカの時計メーカーは衰退。ウォルサムも1949年に破産宣告を受け、1954年に商標だけが別資本に買われる。
こうして約100年の歴史に終止符が打たれた。現在もウォルサムの名前は残るが、当時の技術や製品は全く受け継がれていない。
ウォルサムの懐中時計は何せ生産数が多いので、現在も数多くの逸品が現存し、アメリカを中心にマイナーでニッチな市場を形成している。当時日本にも代理店から輸入されており、国内で最も多く現存する懐中時計のブランドだろうと思う。
◆リバーサイド、ヴァンガードを探すおさーん
ウォルサムには数々の著名な時計があるが、有名どころでヴァンガードとリバーサイドという銘の時計から見ていくことにしたおさーん。どちらの時計も現存数が多く、見た目も派手で造りも良い。その割に現状品であればそこそこお手頃なお値段と、おさーんのようなクソにわかにはちょうど良い。
そうこうしながらの数ヶ月、それなりに知識を習得し、いよいよ獲物の刈り取りに掛かるおさーん。最初の懐中時計は無難にネットショップから買うことに決めた。素性のわからんオークションから1発目を引くのは、あまりにもリスクが高すぎる。
さて、ネットショップの中からなんとか入手できそうな懐中時計を見つけたのは良いが、時計の素性が良くわからない。これがクソにわかの悲しさよ。
◆アメリカ製懐中時計の素性を調べるには?
こうした場合に利用できる、非常に便利なサイトがある。「POCKET WATCH DATABASE」というサイトは、アメリカ製懐中時計の膨大なデータがリストされており、シリアルナンバーで時計の素性だけでなく、価格相場まで見られるのだ。
実はアメリカ製懐中時計の入手を決めたのはこのサイトを知ったことにある。ここで得られる情報があれば、スキル不足をカバーできると踏んだからだ。
◆いよいよ購入
というわけで早速素性を調べる。商品画像からシリアル番号で時計の素性を確認。さらに市場相場を確認し、ネットショップの価格と比較する。売り物の絶対価格は高いのだが、国内入手でお店から買うなら相応か。お金はかき集めればなんとかなる金額だ。
実はアメリカ製懐中時計の入手を決めたのはこのサイトを知ったことにある。ここで得られる情報があれば、スキル不足をカバーできると踏んだからだ。
◆いよいよ購入
というわけで早速素性を調べる。商品画像からシリアル番号で時計の素性を確認。さらに市場相場を確認し、ネットショップの価格と比較する。売り物の絶対価格は高いのだが、国内入手でお店から買うなら相応か。お金はかき集めればなんとかなる金額だ。
「よろしい、ならば購入だ!」
実はおさーん、迷ってるうちにリバーサイドを買い逃したことがある。だから今回とりもなおさずさっさと即決。こうして、おさーんが手に入れた初めてのアンティーク懐中時計はこちらドドン!。

こちらがWalthamのRiversideだ。この個体のムーブメントサイズは0サイズと呼ばれる小型懐中時計で、その大きさはオールドの腕時計とほぼ同様(29.63mm)。このサイズは当時の女性物サイズなので、良いモノでもなんとか手に入れられるお値段。つまるところ、お小遣い範囲のおさーんがターゲットにできるのは。今のところこのあたりが関の山だった。
◆入手した懐中時計の素性について
「POCKET WATCH DATABASE」で検索した結果によれば、この個体はウォルサムのモデル1900とのこと。製造年は1901年前後。アメリカ製の懐中時計は1850年以降からのスタートなので、アメリカモノとしては最盛期を迎える頃の時計になる。
文字盤の劣化もほぼなく、ほんのわずかなヘアラインがあるのみと、100年前の時計と考えるなら恐ろしい状態と言えるレベル。だが懐中時計の世界では、こんなシロモノが結構存在するのがさらに恐ろしい。そして、そのサイズ感はこんな感じ。さすがにちっちゃい。
文字盤の劣化もほぼなく、ほんのわずかなヘアラインがあるのみと、100年前の時計と考えるなら恐ろしい状態と言えるレベル。だが懐中時計の世界では、こんなシロモノが結構存在するのがさらに恐ろしい。そして、そのサイズ感はこんな感じ。さすがにちっちゃい。

0サイズの懐中時計はちょうど腕時計に近いサイズ。カスタムケースにムーブメントを入れ、腕時計化も可能なのだそうな。国内では有数のショップである「マサズ パスタイム」では、裏スケ完全防水ケーシングも請け負ってくれる。先立つものがあれば是非にでもやりたいが、さすがにおいそれと手が出る価格じゃないのが寂しいところ。
※マサズ パスタイムより引用
腕時計と同様、かつて女性物サイズは人気はなかったそうだが、腕時計化により最近は小さいモノの人気が向上。それなりに値段が付くようになったそうだ。
◆文字盤(ダイヤル)とインデックス
それにしてもだな、腕時計と大きさ変わらんとか、ホントに懐中時計かよと。
文字盤は焼物。エナメルガラスで艶のある文字盤だ。落としたらこれ一発だが、落とせば時計自体がアウトだわな。欧州製には耐震も古くからあったりするが(ブレゲがパラシュートと呼ばれるサスペンションを考案している)、この時代のアメリカ製に耐震装置は付いていない。
針は全て青焼だ。青焼針は初めて目にしたが、光に当たる針のなんと綺麗なことか。秒針に光を当てて青色っぽくしてみた。光が当たるとこんな発色だ。
◆ムーブメント
では、次にこの時計の心臓部であるムーブメントをみていただこう。実のところ、懐中時計の魅力はコレに尽きるといっても過言ではない。ネジの頭は磨き上げられ、ダマスキン模様がとても素晴らしいムーブメント。

腕時計のサイズとほぼ変わらない大きさでこの装飾。もうホント素晴らしいの一言しか出てこない。さらに、これが量産品であるという事に、アメリカの技術力の凄さを思い知らされる。
データベースによれば、この時計の生産数は9,684個と1万個近いのだ。120年以上も前によくもまぁこれだけ手が込んだものを。

※光の当て方を変えると美しく発色するダマスキン装飾、加えて曇りひとつないセンターホイールの美しさに目が奪われる
◆ムーブメントの造りについて
さて、ムーブメントだが、地板はニッケル製無垢。欧州製懐中時計のなかには地板が金無垢といった恐ろしいものもあるようだが、ニッケル無垢でもなかなかのものらしい。普及品には真鍮に金メッキの地板が用いられ、ちょっと良い機械にはニッケル無垢が使われているそうだ。
これ以外にも、この時代のアメリカ製懐中時計は、現代時計と比較しても造りが凄い。以下にその贅沢な造りをいくつか並べてみる。これらはアメリカ製鉄道時計では、基本どのメーカーでも共通なお約束の造り。
歯車が金なのは、単なる装飾や贅沢さの意味合いだけではない。金は他の金属に比べ柔らかいので、歯車に使うとスムーズに動作し、噛み合いなど馴染みも良い。加えて腐食に強く錆びず帯磁しない。チラねじにおいても同様。加えてテンプの外周により比重の大きな金属を使うことで、慣性が働き安定して回転する。
テン輪も工夫がなされており、素材はバイメタル(内側と外側で複数の金属を使う)。これは温度差によって起こるテン輪の膨縮がもたらす精度影響をを受けにくくするための当時の工夫。現在は治金技術が進み、熱弾性の影響が極めて小さい合金に取って代わられたことでバイメタルテンプは消えた。また、振り石とアンクルが噛み合う際の確実な動作のため、テン輪の上にダブルローラーと呼ばれるガイドローラーが付く。
巻き上げヒゲとは、ロレックスのムーブメント説明などに、「ほとんどのメーカーは平ヒゲで、巻き上げヒゲを採用するメーカーはロレックスかパテックくらいしか無い!」とか書れる、所謂ブレゲひげと言われるやつ。この当時はミドルグレードくらいからは普通に実装される。
0sといった小型のものでも手を抜かず、大型の高級・高精度の時計の造りをそのまま譲り受けた造りが高級品としての証。とことん贅沢な時計だ。
◆当時のカタログから

※光の当て方を変えると美しく発色するダマスキン装飾、加えて曇りひとつないセンターホイールの美しさに目が奪われる
◆ムーブメントの造りについて
さて、ムーブメントだが、地板はニッケル製無垢。欧州製懐中時計のなかには地板が金無垢といった恐ろしいものもあるようだが、ニッケル無垢でもなかなかのものらしい。普及品には真鍮に金メッキの地板が用いられ、ちょっと良い機械にはニッケル無垢が使われているそうだ。
これ以外にも、この時代のアメリカ製懐中時計は、現代時計と比較しても造りが凄い。以下にその贅沢な造りをいくつか並べてみる。これらはアメリカ製鉄道時計では、基本どのメーカーでも共通なお約束の造り。
- ムーブメントを覆うプレートにダマスキン装飾が使われる。
- 使われる宝石はルビー&サファイア。ハイグレードになると一部ダイヤモンドも使われる。
- 宝石の固定にはシャトンと呼ばれる石押さえが使われる。ミドルグレード以上になると素材が金無垢になるものもある(ゴールドセッティング)。
- ミドルグレード以上でトレイン(二番車・三番車・四番車)の一部に金無垢が使われる(ゴールドトレイン)。ハイグレードになるとすべてのトレインで金無垢が使われるものもある(フルゴールドトレイン)
- ミドルグレード以上でチラねじ及びミーンタームスクリュー(バランス調整ねじ)に金無垢が使われる。
- ミドルグレード以上でほぼ例外なく微動緩急針が実装される。
- ミドルグレード以上で巻き上げヒゲが使われる。
- ミドルグレード以上で温度・等時性・3姿勢以上の調整が行われる。ハイグレードでは調整姿勢数は5姿勢、1920年代より6姿勢調整となる。
歯車が金なのは、単なる装飾や贅沢さの意味合いだけではない。金は他の金属に比べ柔らかいので、歯車に使うとスムーズに動作し、噛み合いなど馴染みも良い。加えて腐食に強く錆びず帯磁しない。チラねじにおいても同様。加えてテンプの外周により比重の大きな金属を使うことで、慣性が働き安定して回転する。
テン輪も工夫がなされており、素材はバイメタル(内側と外側で複数の金属を使う)。これは温度差によって起こるテン輪の膨縮がもたらす精度影響をを受けにくくするための当時の工夫。現在は治金技術が進み、熱弾性の影響が極めて小さい合金に取って代わられたことでバイメタルテンプは消えた。また、振り石とアンクルが噛み合う際の確実な動作のため、テン輪の上にダブルローラーと呼ばれるガイドローラーが付く。
巻き上げヒゲとは、ロレックスのムーブメント説明などに、「ほとんどのメーカーは平ヒゲで、巻き上げヒゲを採用するメーカーはロレックスかパテックくらいしか無い!」とか書れる、所謂ブレゲひげと言われるやつ。この当時はミドルグレードくらいからは普通に実装される。
0sといった小型のものでも手を抜かず、大型の高級・高精度の時計の造りをそのまま譲り受けた造りが高級品としての証。とことん贅沢な時計だ。
◆当時のカタログから

※POCKET WATCH DATABASEより引用
上記画像は、POCKET WATCH DATABASEより引用したモデル1900の該当グレード1915年のカタログだ。このサイトこんな情報も見られるのだ。なんと有益なことよ。
以下適当な意訳。
- 19個のダイヤモンドとルビー
- 1ペアのダイヤモンドキャップ(伏石)
- シャトンはゴールド製(raized gold settings=盛り上がった金無垢のシャトンによる石押さえ)
- 調整済みで注意深く計時された時計
- 温度に対する精度補正テンプ(バイメタル切りテンプ)
- 天真の上下はダイヤモンドで保持される
- バランス調整ネジ(ミーンタイムスクリュー)
- 特許の取り外し可能な天真
- 焼き鈍しされた特許のブレゲひげゼンマイ
- ダブルローラーとサファイアの振り石
- 鉄製のガンギ車
- サファイアの爪石
- 特許の微動緩急針
- ゴールドトレイン
- 安全香箱
- 露出したクラウンホイール
- モダンで芸術的なデザインの高級手塗のガラスダイヤル
なお、1901年前後と言えば、ちょうど人工ルビーの作成方法が確立されるまさにその頃。だが、時計へ行き渡るには数年必要なはずで、ダイヤ・ルビー・サファイアとも全て天然モノ。
さて、上記カタログを見つつ、実際の時計と見比べてみる。
まず、プレートに刻印される各種記載の文字色はゴールドだ。Giltと呼ばれる仕上げらしく金メッキであろうと思われる。
カタログ表記で見ると、ダイヤモンドキャップはテンプのみと記載されるが、手に入れた個体はテンプとガンギの2か所がダイヤモンドのようだ。加えて、トレインはフルゴールドだぞこれ。うーむ、これは嬉しい素晴らしい。同じグレードでも年代の違いによって、このように装飾や装備に違いがある。ウォルサムの傾向では、販売初期にから時間がたつと装備が簡素になっていく。値段も幾分上下するが、できれば古いものを選ぶとより贅沢なものとなることが多い。
◆ケースについて

ケースはこのような感じ。Fahys社製の金張りオープンフェイスケースで、ムーブメント側の蓋がヒンジで開く仕様となっている。文字盤側はスクリュー(ネジ込み)タイプ。ケースに「Guaranteed 20 years」の刻印があることから、素材は金張りだ。
というわけで、懐中時計の機械の中身や仕上げが素晴らしいことがこれでお分かりいただけるだろうか。仕上げだけではない、精度も抜群だ。0サイズは小型化を優先しているので精度も落ちるが、大型の16サイズなどになれば、適切な整備をちゃんと行うことで、現在でも日差は数秒までは追い込めるそうだ。
懐中時計を趣味とされている方も数多くいらっしゃるが、こうしたことを知り、実際に手にするまでは、古臭い骨董趣味のひとつくらいにしか思っていなかったおさーん。だが、こんなもの見て、造りや精度のことも知っちゃったなら、そりゃこっち行っちゃう人がいても無理はないと思う。
初めて手にした懐中時計は、小さいけどこの上なく満足の逸品。最初に「はまぐり」を手にした時と同様、これが自分の物であることがことのほか嬉しいおさーんだった。
懐中時計を趣味とされている方も数多くいらっしゃるが、こうしたことを知り、実際に手にするまでは、古臭い骨董趣味のひとつくらいにしか思っていなかったおさーん。だが、こんなもの見て、造りや精度のことも知っちゃったなら、そりゃこっち行っちゃう人がいても無理はないと思う。
初めて手にした懐中時計は、小さいけどこの上なく満足の逸品。最初に「はまぐり」を手にした時と同様、これが自分の物であることがことのほか嬉しいおさーんだった。
コメント
コメント一覧 (8)
懐中時計ですか。
また深い沼に踏み入りましたね。(^^♪
世間の喧騒やコロナ渦とは全く無縁の趣味の世界にどっぷり嵌っていて、文章からも楽しさが伝わってきます。
おさーん
が
しました
いつもありがとうございます。<(_ _)>
そうなんですよー。気になって仕方ないので買ってしまいました(笑)。
でもですね、アメリカ製は非常にシンプルかつ情報がかなりオープンなんです。加えて真贋問題ともほぼ無縁なので、沼は沼でもわりと気楽に入り込めると思います。
これがスイスやイギリスだとそうもいかないんですけどね。
ご興味のない方にも少しだけ知ってもらえたらと思い書いてみました。
おさーん
が
しました
をっ、遂に足を踏み入れましたね。ブログが一気に過疎化するリスクも顧みず懐中時計、それもアメリカンの世界に^_^ 。私、懐中時計は勿論ですけど、アメリカの時計会社の歴史にも興味がありますので、アメリカン懐中時計シリーズも楽しみにしています^_^
おさーん
が
しました
いつもありがとうございます。<(_ _)>
そうなんですよねー。どうしようか多少迷いましたが、今よりさらに孤独の道をひた走ることにしました。
アメリカ懐中系は日本ではほとんど情報もないので、初心者向けにそうしたところも補完できればと。
でもああいうのを見てると、今の高価な時計からますます興味が薄れていくので、それもそれでどうなのかという話なのですが、どのみち買えませんしまぁいいかと。
いまの時勢と真逆の方向へ向かいますが、今後もお暇なときに少しお付き合いいただければ幸いです。<(_ _)>
おさーん
が
しました
懐中時計へ一度目を向けるのはよく分かります。
オールドウォッチを勉強していくと、何故だかそれ以前に主流であった懐中時計へ興味深く目を向ける傾向が出てきますよね。私もそうでしたが、そこはセイコーの懐中時計で、タイムキーパー、エキセレント、エンパイア、19型等(商工舎も)でした。しかし、おさーんさんはさらにその向こうですね!^^
ポケットウォッチと言えば、やはりアメリカですよね。日本にとってウォルサムなんて影響力は相当なものでしたよね。イリノイなんかも素敵ですけど、やっぱりウォルサムのいくつかある独特な緩急装置がまた魅力的なんですよね。それと、ゴールドシャトンですよね^^
当時の懐中時計は近年の腕時計と違って、ルビー以外にもダイヤやサファイアなども使用しているところがまたグッドでもあります^^
それにしてもよくお調べになられましたね!
その熱意に感服でございます^^
おさーん
が
しました
いつもどうもありがとうございます。
<(_ _)>
やはり唐獅子さんもご存じなんですね。さすがというか慧眼をお持ちというか。
ウォルサムもいいのですが、唐獅子さんのおっしゃるイリノイもホント魅力的なものがあってびっくりです。普通の方からすると、腕時計とは大きさと用途は違うのでしょうが、私にとっては「手巻きノンデイト」なのでさほど違和感がありませんでした(笑)
また、サファイアを使ってるとかさすがよくご存じですね。唐獅子さんの知識量にはホント敬服します。
気軽に少し知ってもらえるといいかもと思って追加してみました。今後も増えていく予定です。よろしくお願いします。
おさーん
が
しました
ついに、深海の「底なし沼」へと足を踏み入れてしまいましたね。※ほんとに深いです!
old懐中はこの時期、SWISSよりUSA。※JAPANと言いたいところですが...。
鉄道の発達に引っ張られるよう(幾多の事故を乗り越え)に急成長を遂げております。機械については、芸術性(手の込んだ装飾)・精度や装飾性(ゴールドシャトン、ダイアやサファイヤ等)が突出しており、尚且つ技術者個々による手作業により信頼性を上げております。(100年以上経っても、未だクロノメーター級です。)
今現在これを再現した場合、想像もつかないほどの時間と労力を費やさないと不可能でしょう。
今後もおさーんさんの「探究心」に期待しております。よろしくです。
追伸:川端さんのマキシマスも良いですが、クレセントstのModel1899、サイドワーンダー(スター型の微動緩急針:多分ゴールド)も良いですよ!
おさーん
が
しました
コメントどうもありがとうございます。<(_ _)>
ご理解いただける方がいらっしゃって嬉しいです。
私も1800年代後半から1900年代半ばまでは、やはりアメリカ懐中の存在を抜きにして時計の歴史は語れないと思っております。アメリカ懐中があったから、現在スイスが盤石な基盤を持つに至ったと考えています。
欧州製やアメリカ製のかつての懐中時計のような品質のものは、今でも作れはするでしょうけど、途方もないコストにとてもビジネスにならないでしょうねきっと。
Crescent St、良い勉強をさせていただきました。ありがとうございました。
<(_ _)>
おさーん
が
しました