さてさて、今回はマーベルである。しかしマーベルも高くなった。以前はレアな飾り文字盤や相当キレイなモノ以外は常にお手頃価格だったが、最近は普通の文字盤でもキレイなら2万を軽く超えてくることも普通。また、キレイなものが増えてきた。
だがそれでもキングセイコー他に比べれば、まだ価格は抑えられるし、古い時計ながら整備をちゃんとすれば実用精度も日差15秒くらいはイケるので充分実用に耐える時計。また、マーベルの時代はまだまだ腕時計が高級品なので、19石赤メッキあたりなら、後の普及品より充分見栄えの良いムーブメントだ。これに加え、なんといってもその豊富な文字盤バリエーションは毎回とても楽しみだ。

マーベルほど、文字盤の種類によって、値段が上下する時計も少ないだろう。はまぐりもSマークがつく初期はとんでもねぇけど、昨今はまぐり自体キレイなものだと10万近くになることもあるのでマーベルの方がフリ幅がでかい気がする。
今まで見た中で最も高価なのは、おそらく一番人気と思われる星座ダイヤル。次がミステリーダイヤル。さすがにこれらは希少性が高く、特に星座ダイヤルは豪華さが他のモノとは全く異なることから、高値もやむなしか。

※星座ダイヤルのサンプルはこちら

エニタイムウエアから引用

※ミステリーダイヤルのサンプルはこちら

エニタイムウエアから引用

変わり文字盤とまではいかないが、こちらのマーベルは人気のくさびインデックスが一部用いられているもの。動作するものを入手した。

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届いた時計を早速開封する。一目見て驚くおさーん。
これはいいわ。ダイヤルの出来が素晴らしい。これがホントの植字なんだな。

持ってるものの中では、三号機が一番のお気に入り。これもSマーク植字だが、今回のマーベルは、そのどれとも全然違う。
写真ではわかりにくいが、Sマークがくっきり。マークの高さとエッジの鋭さ、インデックスのシャープさと高さが他のどれとも段違い。

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文字盤はヤレてるし、ケースは汚れ(錆びか?)もあるが、なによりダイヤルひとめ見ただけで、この時計をめちゃめちゃ気に入った。なるほどこれは素晴らしい。

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このマーベル、3時・6時・9時がクサビというか矢じりのようなインデックス。
インデックスそのものは曇りひとつなく、非常にキレイだ。

で、3号機にも結構似ていたりする。だがインデックスは段違い。
というわけで、比較画像どうぞ。

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※右が今回の六号機、左三号機、どちらも19石耐震付き

写真ではうまく伝わらんか。さらに、どうでもいい人から見たら、これどっちも同じやんという話か。
確かに良く似てはいる、そしてこちらも19石だ。でも全然違うんだってこのふたつ。
まぁでもいいや。どちらの文字盤もいい感じでボンベダイヤルだし。

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さてこの時計、裏蓋を見ると、製造年月が1961年3月となっている。いやマジですかそれ?
61年と言えば、ロードマーベルも発売されて数年経過。「はまぐり」ではとっくにSマークは無くなっている。つーか、下手すりゃ初期から中期に切り替わる直前くらいの時期である。
いやSマーク以前に思ったのは、そもそも61年にマーベル作ってんの?という素朴な疑問だった。

この時代は、あり合わせでなんでもありな状況で、何が出てくるかわからない時代。それにしてもそんな遅くまでマーベル作ってないでしょうよと。
加えてケースにマーベルを表すM刻印もなく、なんかとケース入れ替えた?と思っても不思議はない。ただ、仮に入れ替えたとしても、その「なんか」のケースも、普通はシリーズを示すマークが付くんですけどね。
(マーベルはMだが、例えばクラウンならCWとか、ロードマーベルも内側にLMと刻印が付く)

というわけで、普通に考えるとガッチャだが、ホントに余り物を組み合わせて出しちゃった可能性を捨てきれないのがこの時代の怖いところ。まぁ真相は闇ですな。この時代はホントこんなのもあるかもしれんし。

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というわけで裏蓋を開けての臓物ご開帳。
こりゃまたびっくり、スッカスカですなこれ。だけど、機械はわりとキレイだ。
竜頭から水がバンバン入ってきそうだけど、これくらいスッカスカだと、逆に汗くらいなら大きな損傷も与えず乾きやすそうな気もする。見にくいが、裏蓋内側にぐるりと段差が付いており、ムーブメントとケースの隙間を埋める構造だ。なお、裏蓋内側は磨き加工のみで一切の刻印はない。
表面にケース番号の刻印もないし、こんなケースは初めて見たよ。

マーベルの19石ムーブメントは赤メッキが施された通称「赤機械」と呼ばれるムーブメント。
おさーんは他にも19石を2つ持っているが、これは初号機とよく似たムーブメントだ。
耐震装置は19石ではいつものE-2耐震で、テンプはチラなしテンプ。

マーベルは時代も古いのと、初期のモデルは廉価版もあったことから、耐震装置が付かないものも結構ある。また、使われる耐震装置も複数あるため、初号機でご紹介したものを再度ご紹介しておこう。

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※「セイコー クラウン・クロノス・マーベル増補版」より引用


19石はぼE-2耐震ばかりなのだが、この時計がホントに1961年に造られたのなら、S-2耐震積んでいてもよさそうなものだ。まぁホントに余ってた部品で組み立てたのかもしれないな。

なお、ムーブメントを見てわかる通り、この時代の時計はパッキンすらない非防水で、汗などで簡単に中に湿気が入る。おさーんもつい最近、最も大事な「はまぐり」で手痛い失敗により、OHを行ったばかりだ。竜頭にもパッキンがないので、水回りには細心の注意が必要だ。

これに加え、時計の大敵は衝撃。水は気を付ければなんとか頑張れるかもだが、振動や衝撃は、腕に着けて活動が前提の腕時計では、いかに気を付けようともなかなか大変。
よっておさーんがマーベルを買う際、防水性は諦めるとしても、少しでも維持が楽なよう耐震装置付きを買い求めている。
現代の生活に慣れたおさーんとしては、衝撃まで隅々気を配り使うのは、さすがになかなか大変だ。

先に書いた通り、マーベルは現在の価格がさほど高騰しない。とすれば、高価なものに比べ、こまめにOHしてある個体はかなり少ないであろう。
となれば、とうの昔に油も切れ、各歯車や天真のホゾなどは、数十年の稼働になんとか耐えているレベルかもしれない。ちょっとした衝撃でもポロっと逝ってしまうこともあるかもしれない。

だから古い時計は耐震装置が付いているからと言って油断は禁物。例えばだ、竜頭を巻いても動き出しが渋いことはよくあったりする。或は、油切れその他で、ちょっと止まったりすることもあるだろう。
こうしたとき、ちょっと衝撃を与えてあげると動き出すなんてのもよく見かける話だ。
だが、数十年の稼働で脆くなった可能性もある古い時計で、風防を指でトントンたたいたり、爪でカツンと弾いたりと。
そんな危険なことせんでも、腕に着けて時計を少し振ってあげれば済む話なのだが、意外とこうしたことを知らない人が多いのに驚くおさーんである。←最近実際にあった話

水と同様耐震付きでも衝撃に対する取扱いは慎重にということで。

というわけで、このマーベル、所有するマーベルの中ではおさーんの一番のお気に入りとなったのだった。いやーマーベルはバリエーションが多くて飽きんわホント。

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セイコー マーベル
製造年月:1961年3月
モデルナンバー:不明
キャリバーナンバー:なし(手巻)
ケースナンバー:不明
ペットネーム:なし
石数:19石
振動数:18,000回/時(5振動)
ケース:SS
文字盤:不明