最近なんだか雨が多いのである。気温も高い時には20度後半となり、ただでさえ非防水なオールド腕時計や懐中時計を使える期間が短いというのに、雨なんか最悪である。
日本の気候を考えると、現存する古時計の現役当時はかなり過酷な状況だったことが伺える。今ならこうした季節は、普通の時計着けるかスマホで済む話。だが、当時の時計は生活必需品だ。非防水だから着けないという選択肢は微塵もない。そりゃ汗や水が入ってしまう時計も当り前に多かっただろう。
そう考えると、当時の高級時計でもない一般的な時計(それでも当時はお高い道具だったと思う)が、今に至るまで大きな劣化や痛みが少なく残ること自体が奇跡に近い気もする。
というわけで前置が長くなったが、なぜかここまで忘れていたわこいつ。今までひとつも持ってなかったのが不思議であった。
昨今何かと話題のキングセイコーといえば、古くは亀戸製の手巻き高級機だが、往年のキングセイコー好きなおさーんがこれを持っていなかったのはなぜなのか。
そんなこんなで回の時計は初物となるクロノスである。実のところ、「そういや持ってねぇわ」というのが手に入れてきっかけであった。だが、実際に手に入れてみて、いたくこれを気に入ってしまったおさーん。加えてこの時計はなかなかの出物。
そりゃクロノスといえばキングセイコーをはじめとする亀戸製ムーブメントのご先祖だ。気づけばおさーんが気にならないわけがないんだよな。

さて、出物というのはこの文字盤。そう、これSマーク付きなのだ。
クロノスはロードマーベルの販売開始時期とかなり近い頃に発売された時計で、ロードマーベルにも希少なSロードが存在するように、この時代はSマークも文字盤マークも現存していた。クロノスは今でも希少なSマーク付きローンチモデルが結構現存しているのである。
ところで、着けてみたけど、いやこの時点でもうなんかいいよねこの時計。

さらにこれ、文字盤がなにやら汚く見えるが、これ塗装がちょっと変わっている。文字盤の表面がなんかざらついている文字盤なのだ。一種の代わり文字盤といったところか。加えて、この時計の文字盤はかなりキレイ。少々曇り気味なのはプラ風貌の真ん中に擦り傷がはいっているからなのだった。
実際手にしてみて、文字盤がかなりキレイなことにちょっと驚いている次第。そういえば、この画像とまったく同じのがトンボ本に載ってたな。あれはこの文字盤だったか。
針もドルフィン針じゃなく、細めのまさに剣といった感じの針になる。クロノスはこうしたタイプが多く、これがクロノスの特色だ。そして実際にマーベルより薄い。とてもすっきりとしており、洗練されたシンプルな印象を受けるのはおさーんだけではないだろう。
インデックスの太さと変わらない針、とてもすっきりしていてお上品。この雰囲気は今まで持っていた時計にはない感じだ。いやいいわコレ。

さて、クロノスは、戦後の復興期を経て、第二精工舎(亀戸)から満を持して開発された時計。当時女性モノの腕時計を主力とし、紳士モノはスーパー焼き直しのローレルしか持っていなかった亀戸から、諏訪製マーベルに遅れること2年後の1958年に発売された時計だ。
その後、キングセイコーをはじめとする、亀戸製の時計のベースムーブメントとなったのは周知のとおりだ。
亀戸の意地というかなんというか、マーベルと同じ大きさでマーベルより高精度で少し薄く優れた時計をといった設計思想が見てとれる。
クロノス発売から1年後、諏訪からマーベル後継モデルとして、マーベルを大型化したクラウンが発売される。クロノスとクラウンはバチバチに切磋琢磨の様相を繰り広げたのは以前書いたとおり。
17石からスタートしたクロノスは、19石で発売されたクラウンにすぐさま対抗し、21石・23石と多石化する。
というわけで、この時計は17石でSマーク付きと割と初期に発売されたものだ。クロノスの最初期はSマークが植字とのことらしく、こちらはプリントなので少し後ということになる。Sマークの無くなるちょっと前というところか。なお、この時計、1958年11月製造なので、植字のSマークはかなり短い期間ということだね。
なお、1年後に販売されたクラウンにも、ギリSマーク付きがあるらしいとはトンボ本の弁。ただ、おさーんはこれまで一度も見たことはない。1年後でホントにSマークがあったのかは眉唾だが、まぁトンボ本にあると書いてあるのであったんだろうきっと。
このクロノスの側は金張りだが裏蓋はステンレスだ。この時期よくある時計の側仕様で、14KのFGF(FRONT GOLD FILLLED)と呼ばれる仕様になる。側にはこのほかSSや14KGFがあり、後年になるとEGPや18Kなどの仕様も出てくるようだ。
※EGP=GOLD PLATEでいわゆる金メッキ


では、ムーブメントを見てみよう。

これは汚れも少なく、なかなかキレイなムーブメント。おさーんがこのムーブメントが見た目に結構好きなのは前に書いた通り(正確にいうと好きなのはキングセイコー・ファースト)。テンプの受けが波状のブリッジになっているのがなんかいい。
ムーブメントの造りについては、普及品というほど簡素ではないが、特に手の込んだ仕上げがされているわけではなく至って質素な感じ。だが、機械加工がそれほど楽ではない曲線を基調としたブリッジを使っているところが目を引く。徹底的にコストを意識して設計したならこんな加工は行わないだろう。
そんなところも亀戸の意地なのかもしれない。
では、ベンチマークとなったマーベルと比べてみよう。
※以下画像はマーベル17石のサンプル画像

こちらマーベルの17石、五号機のムーブメントだ。見てわかるように、直線基調のマーベルに対し、曲線基調のクロノス。そして片持ちテンプのマーベルに対し、両受けブリッジ構造のクロノス。この特徴はそれぞれの派生モデルにも受け継がれ、ロードマーベルやキングセイコーは双方の流れを汲むムーブメント構造となっている。
クロノスが販売された時代は、まだムーブメントの体系整理が行われておらず、キャリバーナンバーは付かない。後年になると、54Aというキャリバーナンバーが振られ、ブリッジの緩急針あたりに刻印が入るようになる。なお、54Aというキャリバーコードは、17石・21石・23石共通のキャリバーコードらしい。
因みに、おさーんはクラウンの21石も持っているが、クロノスとクラウンのムーブメントを比べると、残念ながら加工はどう見ても向こうの方がよさそうだ。多分機械としてのモノもあちらがよさそう。
クラウンのムーブメントは加工においてもかなり見栄えが良く、素組みでも精度が出そうな雰囲気がある。なにせ後のグランドセイコーやロードマーベルのベースとなったムーブメントである。
意地と技術力で切り詰めて性能を確保する亀戸に対し、王道の手法で安全に性能を担保する諏訪といった印象を受ける。どちらが良いというわけではなく、同じメーカー内でこうした対照的な手法を取って作られた機械があるのが面白い。
クロノスの話に戻すが、この時計の耐震装置はS-2ではなく、まだS-1耐震の模様。補油装置もダイヤフィクスではなく旧式のものになる。ロードマーベルで言えば、販売直後の初期Sロードと同じころの製品なので、Sロード同様旧式な感じなのは仕方ない。なにせ軽く60年以上前の時計なんだしね。
Sマーク付きということで、特になんの考えもなく今回手に入れたクロノス。
だが実際に手にしてみると、状態もよく、見た目や風情も素晴しくと、いたく気に入ったのであった。
いやぁこれはホントいい買い物だった。久しぶりに期待を裏切られた良い時計で、おさーんはかなりご機嫌である。手に入れたのが2年前ということもあり、買値がとてもお手頃だったとくれば、もう言うことは何もない。あまりに美味しすぎである。
やはりまだまだオールド漁りがやめられないおさーんなのであった
日本の気候を考えると、現存する古時計の現役当時はかなり過酷な状況だったことが伺える。今ならこうした季節は、普通の時計着けるかスマホで済む話。だが、当時の時計は生活必需品だ。非防水だから着けないという選択肢は微塵もない。そりゃ汗や水が入ってしまう時計も当り前に多かっただろう。
そう考えると、当時の高級時計でもない一般的な時計(それでも当時はお高い道具だったと思う)が、今に至るまで大きな劣化や痛みが少なく残ること自体が奇跡に近い気もする。
というわけで前置が長くなったが、なぜかここまで忘れていたわこいつ。今までひとつも持ってなかったのが不思議であった。
昨今何かと話題のキングセイコーといえば、古くは亀戸製の手巻き高級機だが、往年のキングセイコー好きなおさーんがこれを持っていなかったのはなぜなのか。
そんなこんなで回の時計は初物となるクロノスである。実のところ、「そういや持ってねぇわ」というのが手に入れてきっかけであった。だが、実際に手に入れてみて、いたくこれを気に入ってしまったおさーん。加えてこの時計はなかなかの出物。
そりゃクロノスといえばキングセイコーをはじめとする亀戸製ムーブメントのご先祖だ。気づけばおさーんが気にならないわけがないんだよな。

さて、出物というのはこの文字盤。そう、これSマーク付きなのだ。
クロノスはロードマーベルの販売開始時期とかなり近い頃に発売された時計で、ロードマーベルにも希少なSロードが存在するように、この時代はSマークも文字盤マークも現存していた。クロノスは今でも希少なSマーク付きローンチモデルが結構現存しているのである。
ところで、着けてみたけど、いやこの時点でもうなんかいいよねこの時計。

さらにこれ、文字盤がなにやら汚く見えるが、これ塗装がちょっと変わっている。文字盤の表面がなんかざらついている文字盤なのだ。一種の代わり文字盤といったところか。加えて、この時計の文字盤はかなりキレイ。少々曇り気味なのはプラ風貌の真ん中に擦り傷がはいっているからなのだった。
実際手にしてみて、文字盤がかなりキレイなことにちょっと驚いている次第。そういえば、この画像とまったく同じのがトンボ本に載ってたな。あれはこの文字盤だったか。
針もドルフィン針じゃなく、細めのまさに剣といった感じの針になる。クロノスはこうしたタイプが多く、これがクロノスの特色だ。そして実際にマーベルより薄い。とてもすっきりとしており、洗練されたシンプルな印象を受けるのはおさーんだけではないだろう。
インデックスの太さと変わらない針、とてもすっきりしていてお上品。この雰囲気は今まで持っていた時計にはない感じだ。いやいいわコレ。

さて、クロノスは、戦後の復興期を経て、第二精工舎(亀戸)から満を持して開発された時計。当時女性モノの腕時計を主力とし、紳士モノはスーパー焼き直しのローレルしか持っていなかった亀戸から、諏訪製マーベルに遅れること2年後の1958年に発売された時計だ。
その後、キングセイコーをはじめとする、亀戸製の時計のベースムーブメントとなったのは周知のとおりだ。
亀戸の意地というかなんというか、マーベルと同じ大きさでマーベルより高精度で少し薄く優れた時計をといった設計思想が見てとれる。
クロノス発売から1年後、諏訪からマーベル後継モデルとして、マーベルを大型化したクラウンが発売される。クロノスとクラウンはバチバチに切磋琢磨の様相を繰り広げたのは以前書いたとおり。
17石からスタートしたクロノスは、19石で発売されたクラウンにすぐさま対抗し、21石・23石と多石化する。
というわけで、この時計は17石でSマーク付きと割と初期に発売されたものだ。クロノスの最初期はSマークが植字とのことらしく、こちらはプリントなので少し後ということになる。Sマークの無くなるちょっと前というところか。なお、この時計、1958年11月製造なので、植字のSマークはかなり短い期間ということだね。
なお、1年後に販売されたクラウンにも、ギリSマーク付きがあるらしいとはトンボ本の弁。ただ、おさーんはこれまで一度も見たことはない。1年後でホントにSマークがあったのかは眉唾だが、まぁトンボ本にあると書いてあるのであったんだろうきっと。
このクロノスの側は金張りだが裏蓋はステンレスだ。この時期よくある時計の側仕様で、14KのFGF(FRONT GOLD FILLLED)と呼ばれる仕様になる。側にはこのほかSSや14KGFがあり、後年になるとEGPや18Kなどの仕様も出てくるようだ。
※EGP=GOLD PLATEでいわゆる金メッキ


では、ムーブメントを見てみよう。

これは汚れも少なく、なかなかキレイなムーブメント。おさーんがこのムーブメントが見た目に結構好きなのは前に書いた通り(正確にいうと好きなのはキングセイコー・ファースト)。テンプの受けが波状のブリッジになっているのがなんかいい。
ムーブメントの造りについては、普及品というほど簡素ではないが、特に手の込んだ仕上げがされているわけではなく至って質素な感じ。だが、機械加工がそれほど楽ではない曲線を基調としたブリッジを使っているところが目を引く。徹底的にコストを意識して設計したならこんな加工は行わないだろう。
そんなところも亀戸の意地なのかもしれない。
では、ベンチマークとなったマーベルと比べてみよう。
※以下画像はマーベル17石のサンプル画像

こちらマーベルの17石、五号機のムーブメントだ。見てわかるように、直線基調のマーベルに対し、曲線基調のクロノス。そして片持ちテンプのマーベルに対し、両受けブリッジ構造のクロノス。この特徴はそれぞれの派生モデルにも受け継がれ、ロードマーベルやキングセイコーは双方の流れを汲むムーブメント構造となっている。
クロノスが販売された時代は、まだムーブメントの体系整理が行われておらず、キャリバーナンバーは付かない。後年になると、54Aというキャリバーナンバーが振られ、ブリッジの緩急針あたりに刻印が入るようになる。なお、54Aというキャリバーコードは、17石・21石・23石共通のキャリバーコードらしい。
因みに、おさーんはクラウンの21石も持っているが、クロノスとクラウンのムーブメントを比べると、残念ながら加工はどう見ても向こうの方がよさそうだ。多分機械としてのモノもあちらがよさそう。
クラウンのムーブメントは加工においてもかなり見栄えが良く、素組みでも精度が出そうな雰囲気がある。なにせ後のグランドセイコーやロードマーベルのベースとなったムーブメントである。
意地と技術力で切り詰めて性能を確保する亀戸に対し、王道の手法で安全に性能を担保する諏訪といった印象を受ける。どちらが良いというわけではなく、同じメーカー内でこうした対照的な手法を取って作られた機械があるのが面白い。
クロノスの話に戻すが、この時計の耐震装置はS-2ではなく、まだS-1耐震の模様。補油装置もダイヤフィクスではなく旧式のものになる。ロードマーベルで言えば、販売直後の初期Sロードと同じころの製品なので、Sロード同様旧式な感じなのは仕方ない。なにせ軽く60年以上前の時計なんだしね。
Sマーク付きということで、特になんの考えもなく今回手に入れたクロノス。
だが実際に手にしてみると、状態もよく、見た目や風情も素晴しくと、いたく気に入ったのであった。
いやぁこれはホントいい買い物だった。久しぶりに期待を裏切られた良い時計で、おさーんはかなりご機嫌である。手に入れたのが2年前ということもあり、買値がとてもお手頃だったとくれば、もう言うことは何もない。あまりに美味しすぎである。
やはりまだまだオールド漁りがやめられないおさーんなのであった
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セイコー クロノス
製造年月:1958年11月
モデルナンバー:なし
製造年月:1958年11月
モデルナンバー:なし
キャリバーナンバー:なし(手巻)
ケースナンバー:J14021
ケースナンバー:J14021
ペットネーム:C
石数:17石
振動数:18,000回/時(5振動)
石数:17石
振動数:18,000回/時(5振動)
ケース:14K FGF
文字盤:不明
コメント
コメント一覧 (2)
Sクロノス!良いですねえ〜。実に美しい。この時期の国産のデザインって本当に素晴らしいですよね。クラウンとかクロノスは気を抜くと集めたくなるから困ります^^;
おさーん
が
しました
いつもありがとうございます。
<(_ _)>
この頃の時計のデザインって、変り文字盤のように遊び心もあったりと、私もとても好きです。セイコーはこの後セイコーデザインを確立していきますけど、どうしてもその前のものばかり目に留まってしまいます。
セイコーに限らず、他社の時計もそうですよね。魅力的なものをたくさん教えて頂きました。
クロノスやクラウンは高くなったと言っても、普通のモノならまだお手頃なものも多いので、どうしても増えちゃうんですよね(笑)。
仕方ないかと思います。
おさーん
が
しました