さて、まだ続くのか懐中時計シリーズ。
今回の懐中時計、実はずいぶん昔に手に入れていたものだ。そう、あれは確か3年近く前のことじゃった。
パトリシアンのシリーズで、「ほかにも別の懐中時計があったと思ったが」的なことを書いたが、それがそのあとひょっこり出てきた。それがこれ。
おさーんの手元でちょっと寝ており熟成されたものだが、もとより130年以上前のものなので、大勢に影響はないだろう。

まぁそれはさておき、今回のブツをご紹介しておこう。
それではどうぞ。

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さて、見てわかる通り、リバーサイドの時に説明したハンターモデルである。
なぜだかハンターモデルってローマ数字のものが多い気がする。なんでだろうな。欧州モノはローマ数字が多いのかな。アメリカの懐中時計は基本鉄道時計準拠でオープンフェイスのアラビア数字になるため、欧州色の強いハンターケースはローマ数字が多いのか。まぁ知らんけど。

で、このハンターモデルを収めるケースがハンターケース。以前、モデル1888リバーサイドで説明したハンターケースがこの写真のケースだ。

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※Crecrnt Watch Case Co.の"C.W.C.CO."刻印

ハンターケースは蓋を開けるまで時間がわからないので若干手間である。ずぼらな人間はどこにでもいるもので、このハンターケースの文字盤側を、小さくくりぬいてしまえば時間わかるじゃん!、と考えた人がいたらしい。で、くりぬいた穴にガラスを付けたものをデミハンターと呼んだりする。別名ナポレオン・ケースとも言うけどね。

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続いて文字盤。一見キレイな文字盤をキズミで確認してみる。
ほーこりゃキレイだわ。こんなキレイなのなかなかないんじゃないかな。
まぁ、アンティーク懐中時計には、状態の良いものが数多く残るってるとは言っても、ポーセリンは焼き物なのでたいていのものには割れや欠けがあるのが常。なにせ100年以上経過してる身に着けるモノだ。そりゃキレイと言ってもヘアラインのひとつやふたつくらいは当り前だ。

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ところがだね、これ、多少文字盤の焼けはあるけど、5倍キズミじゃヘアラインは見つけられなかったよ、欠けもないわこれ。これにはおさーんもびっくり。ハンターは表にもう一枚蓋が付くから持ちもいいのかね。
というわけで、文字盤は文句のつけようがなかった。

で、ムーブメントどうぞ。

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※ヤフオクの出品画像を引用しています

あらまぁ、なんかこう質素ですね的な。でもこれ結構キレイでしょ。ちゃんと稼働品だよもちろん。
実際はこの写真より色味もキレイでしたよ。地板はニッケルがいいなと思ってたけど、真鍮金メッキも悪くないねこれなら。

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※なかなか質感の高いエングレービング


では、この時計の素性をいつものデータベースから紐解いてみよう。

この時計のモデルは1888。グレードはNo.20というもの。いつものペットネームが何もなく、いたって普通のグレードだ。
製造年は1897年から1899年の間。製造数量は305,373個。16サイズ7石の普及モデルだ。130年前に30万個て・・・スケール凄すぎ。

ムーブメントは真鍮金メッキ仕上げ。懐中時計も昔は真鍮金メッキ仕上げだったのだが、のちに高級品にニッケル無垢が使われるようになった。だが、ニッケル地板は高級品なので、その後も普及機にはこうしたムーブメントが使われていたそうな。ギルト(Gilted)と呼ばれる仕上げだ。
地板のほか、トレインなどにもこれが使われる。2番車だけがゴールドトレインの場合、3番車・4番車はこの仕上げだ。

では恒例のカタログ行ってみよう。

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カタログさみしすぎ。補正テンプ、特許のブレゲひげゼンマイ搭載。
10ドルで売られてたんかこれ。安っ。
おさーん、当時の貨幣価値がどれくらいなのか参考に調べてみた。そしたら、”The Inflation Calculatorl”というサイトでなんか計算できるらしい。
それによれば、当時の10ドルは現在の310ドルくらいだって。結構するもんだね。ただ、これムーブメント単体でケース別売りだから。ケースはクレセントの15年保証金張り。Keystoneに買収される前のもの。時計価格の割合からすると、ケースもかなりいい値段してたんじゃないかな多分。

そう考えると結構高いよね。加えて日給・週給労働者がほとんどだった当時では、今より価格価値は高いはずだから、なかなか手が出ない代物だ。時計は普及品でも相当贅沢なモノだったということか。

で、今現在これね、eBayあたりでムーブメント単体だと邦貨換算1,000~2,000円台。まぁ完全な送料負け。ところが、ケースに入ると10倍くらい値段が変わる。恐ろしい。
さらにこれがハンターケース単体だと、10年保証あたりの金張りケースでも、動くものならeBayで150ドルくらいは普通にするのよ。お店なら軽く200ドル超えちゃうという。ケースって高いんだよホント。とりわけハンターは部材も多いしね。

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※ヤフオクの出品画像を引用しています

この時計、ヤフオクで見つけたのだが、通常こうしたものはこれまで狙わなかったおさーん。
今回こいつのポイントはなんなのか。

こいつ見つけたとき、詳細は書かれてなかったのよ。そこでおさーん、いつものごとく時計の素性を調べ始めるわけですよ。サイズわかんないと話にならんからね。
調べたらこれ16サイズ。その上さらにモデル1888だったわけですよ。

モデル1888となれば話が変わってくる。モデル1888のケースが入手困難なのはリバーサイドの時に書いた通り。何かあったら使えるケースは、お値段お手頃なら買っておいても損はなし。気兼ねなく普段使いにもできるしね。

という感じで3年ほど前に手に入れたものだった。だが、まぁもともとドナー扱いだから届いた商品はどこかにしまい込まれてそのまま。そして最近発掘されたと。

なお、いつものごとく歩度計測アプリで測るとダイヤルアップ・ダイヤルダウン共に+28秒程度。両方とも揃っているということは、気休めかもだが、まぁテンプ周りに大きな故障が潜んでいる可能性は少ないということか。寝かしてたものを起こしただけで手も入れてない状態だが、さすが16sの懐中時計、普及品でもあなどれん数値を叩き出すぞこいつ。

でね、見つけて思ったわけよ。ちょうどいい具合に同じモデルの16サイズのサイドワインダーあるでしょ。そう、この間手に入れたモデル1888のリバーサイド。
あちらもせっかくのハンターモデル、ちゃんとハンターケースに収めてみてはどうかなと。

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あっちにもケースもあるから。ちゃんとこっちにもケースつけてあげるから千社札みたいなエングレービングの入ったやつ。

というわけで、そのうちケースの入れ替えを試みようかと思う。

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Waltham No.20 
製造年月:1897年から1899年
モデルナンバー:Model1888
グレード:No.20
生産数量:305,373個
キャリバーナンバー:7510341(手巻)
サイズ:16s
石数:7石
ムーブメントタイプ:ハンティング
ムーブメントセット:ペンダントセット
振動数:18,000/時(5振動)
ケース:Crescent Watch Case Co. 14KGF・15年保証・ハンターケース
文字盤:シングルサンク・エナメル文字盤