入手が絶対無理だろうと思ってた時計が運よく出てきたので、裸だろうが躊躇なく買ってしまった。行きがかり上、いくつか揃えてしまっているとなれば、買える値段ならそりゃとりあえず行っとくだろう普通。→そういうのは大義名分と人は言う
というわけで、数が少ないリバーサイドマキシマの筆頭がこれ。まだ裸のままだがお披露目してみよう。どうぞドドン!。

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ダブルサンクダイヤルでローマ数字インデックスのこの時計、そのサイズは6sで、ミリ換算34.71mmだそうな。これまでさほど気にもしてなかったけど、ダブルサンクダイヤルはやはり見栄えが良い。この大きはダイヤルサイズが小さいため段差が映える。高級ダイヤルと言われているダブルサンクだが、ダブルサンクはヴァンガードしか持っていないので改めて見直す良いきっかけになった。ちなみに、ネットで見た記事では、ウォルサムのダブルサンクダイヤルを搭載する機種は、このモデルが最小なのだそうな。

実機はダイヤルの状態がすこぶる良い。多少の汚れはあるが、キズミで見てもヘアラインすらなさそうだ。針もキレイなまま。またこれダイヤルにA.W.W.Co.と入っているのが大変よろしい。(American Waltham Watch Coの略)

この時計はModel1890のリバーサイドマキシマ。あちこち検索してみると、ウォルサムの早い時期に作られたと分類されるムーブメントらしく、旧型ムーブメントという記載を見かける。

では、いつものPOCKET WATCH DATABASEをひも解いてみよう。
Model1890のこのグレードにおいて特筆すべき点は、先に書いたように何せ生産個数が少ないのである。Waltham GrayBook Listによれば、該当グレードはたったの500個。アンティーク懐中モノで500もあればレアでもなんでもないが、ことアメリカ製のウォルサムにおいては相当希少と呼べるレベル。どうやら1回のロットで生産を終えてしまった時計らしい。製造500個なら現存はもっと少ないだろう。どうりで6sのマキシマを見ないはずだ、そりゃ出てこんわ。

これくらい少ないと、データベースの相場もあてにならんだろう。一応相場見ながら買ってみたものの、適正なのかどうかすらよくわからん。正直なところ、完動とは書かれていなかったので博打みたいなもんだ。もしかすると大枚をドブに捨てたかもしれない戦々恐々な事態。→いやちゃんと動いたから

では時計の素性の続き。
御多分に漏れず、アメリカ製懐中時計はレイルーロード・アプロード準拠がほとんど。この時計のサイズは公認鉄道時計の規格外だが、造りはほぼ準拠しているのはいつもの通り。
というわけで、ムーブメントがこちら。

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過去記事の16sモデル1899マキシマなどに比べるとプレートの形が古い感じだ。3/4スプリットプレートのムーブメントはニッケルで、0サイズマキシマなどと同じゴールドのレタリングが入る。ダマスキンも込み入ったもので非常に美しい。旧モデルはどれも複雑なダマスキン模様だが、時代を経て1900年以降になると、ダマスキンもどんどん簡素化され彫りも薄くなる。さらに1930年代後半になるとダマスキンもなくなってしまう。だから古いムーブメントはとにかく見て楽しい。

というわけで、カタログなのだが、いつものデータベースには登録されていなかった。つーか、生産個数も少なく、140年ほども前の工業製品ともなると、マキシマといえど情報らしき情報もほとんど転がっていない。ようやく探し当てたのはNAWCC(古典時計協会)のフォーラム記事くらいなもので、下記カタログもNAWCCフォーラムから引用したものだ。

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NAWCCフォーラムより引用

カタログには21Jの表記があるが、調べてみても21Jは出てこなかったので恐らく間違いじゃないかと。
なんかこのカタログ略語だらけだ。しかしここまで個体写真やカタログを見まくったおさーん、既にこれくらいなら読み解く能力を身に着けておるわぬぅははは!。

2か所のダイヤモンドキャップとルビーが使われていて、天真の上下伏石はダイヤモンドキャップ。
ゴールドシャトンにゴールドトレインを実装し、ダブルローラー・特許の緩急微調整装置付きで、焼き鈍しされたブレげひげゼンマイ搭載。加えてもちろん等時性・温度・姿勢の調整がされてますよと。

何のことは無い、つまるところまぁいつものお馴染みな記載であった。
実物と比較すると、ほぼカタログ記載通りだけどトレインがフルゴールドだったラッキー。
なお、6sは数としては少ないものの、国内でもたまに6sは見かけるレベルで入手は問題ない。eBayなら金無垢ケースも見つかるので素材は何でもござれといったところ。願わくば銀がいいなと願うおさーんだった。

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メーカー・モデル:Waltham Riverside
製造年:1896年10月~1901年5月の間だがシリアルが若いので初期相当かと思われる
モデルナンバー:Model1890
グレード:Maximus
生産数量:500個
キャリバーナンバー:7161004(手巻)
サイズ:6s(34.71mm)
石数:19石
ムーブメントタイプ:ハンティング
ムーブメントセット:ペンダントセット
振動数:18,000/時(5振動)
ケース:なし
文字盤:ダブルサンク・エナメル・ガラス文字盤