えー、たまたまなのだが、ウォルサムの古書を見つけたので手に入れた。書籍は「WALTHAM 時計讀本」という書籍で、米国ウォルサム時計會社が編集したもの。記載は日本語だ。

著者は赤松孫一氏。米国ウォルサムの日本法人(もしくは販売代理店)で編集・発刊したものかと思われる。著者の名前で検索すると、明治元年の米国ウォルサムの支社長と出てくる。いわゆる貿易商館で、ウォルサムの販売代理店なんだろうなきっと。知らんけど。

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初版は昭和3年11月発刊で、この本は第6版。試しにこの書籍を検索すると、昭和初期とかなり古いものにかかわらず、今も古書としての流通がそこそこあるようだ。もう90年以上も前なのに、結構今でも残ってるのね。ほー。
ちなみに、昭和3年というと、時は西暦1928年。おさーんの持つウォルサム製品はこれより少し前のものがほとんど。1930年以降のものは狙わない方針なのだが、それ以前であればギリでこの時代の物も持っている。

書籍の中身は時間の概念と考え方から始まり、日時計にはじまる昔からの時計の解説。これに加え、フランス・スイス・イギリス・アメリカ・日本の時計および時計産業についての解説や、機械式時計の仕組みなどなど。その内容は多岐に渡り、しかも詳細に記載される。
その内容は、ウォルサム発刊といえど、時間や時計そのものに対し一般的かつ仔細な解説が網羅され、このまま現代語表記に書き換えるだけで、現在でもかなり詳しい資料となる内容。いやぁ驚いた。

なお、記事の合間にウォルサムの製品や製造現場などの絵と写真が挿絵的に入る。こうしたところが唯一ウォルサム発刊たる部分かと。

挿絵の中から懐中時計を少し紹介してみよう

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※プレミアマキシマの商品説明

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プレミア マキシマのムーブメント写真と説明。おーなんかこれ、日本語の説明がとっても新鮮だわ。
いつもの記載ですなこれ。カタログをそのまま日本語化した感じでこれは面白い。
プレミアマキシマは、アメリカでも確かケーシングされて発売されたはず。無垢ケースのみだったような気がする。だがまぁ今はかなり高価な時計で、ほとんどお目にかかることはない。

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バカスな結果いくつか所持するヴァンガード23石のインジケーターモデル。これも当時の日本ではケース付きで販売ですね。14KWGFと10KGFとニッケルの側ですか。

他にもクレセントストリートやPSバートレットなどの紹介もあったが、日本語で書かれたものは珍しくなかなか面白かった。

さて、本書の巻末に付録として「ウォルサム時計に関する逸話」と「時計所持者の心得」という項がある。これがなかなか面白かったので紹介したい。

まずは「ウォルサム時計に関する逸話」の一節から。
筆者がリバーサイドを所持し、神戸にいたときのこと。そのリバーサイドは日差1秒だったらしいのだが、まずこれがとんでもねぇなと。
まぁそれは置いとくとして、港の埠頭で、正午の時刻を知らせる報時球を見ていたところ、報時球が知らせる正午とリバーサイドでは8秒ずれていたそうな。筆者は「これは重大な事件!」→マジか(笑)
と人力車を走らせ港務官へ報告し、結果報時球が8秒ずれていることを認めさせたそうだ。本書には、そんな国内外の逸話が他にもいくつか記載されていた。
なんだそれ。もう笑うしかないのだが、現役で動いてた懐中時計ってそんな凄いのかと。

次に「時計所持者の心得」である。
これは現代語で全部記載してみよう。基本的に旧字を直し、ほんの少し省略した部分はあるが、以下ほぼ原文ママである。
  • 時計の真価は機械にある。したがって側の体裁より内部の機械の優良なものを選ぶこと。正確な時計は日常気分に安心を与える。
  • 時計購入の際は時計店にて十分に調整したものを受け取ること。
  • 古時計の購入は絶対に避けるべき。古時計の多くは故障を生じやすく、度々修理や調整を繰り返す等、無用な費用と手数を要する。
  • 時計機械の構造は極めて複雑微妙に出来ているため、側は厚い頑丈なものを選び、また日常の取り扱いは静にかつ注意を用いること。
  • 時計を正確に動かすためには、なるべく常に一定の位置、例えば龍頭を上の位置に置くのが良い。
  • 故障が起こった時は信用ある時計師に依頼し、かつ時計製造会社の純正部品を用いて修理すること。また修繕には十分な期間を与えることが肝要。
  • 時計は信用ある時計師に依頼して、1年か2年おきに機械の掃除並びに注油の必要がある。これを怠ると時計の正確度及び耐久性の上に大きな影響を及ぼす。
  • 時計は毎日一定の時刻、なるべく毎朝巻くようにすること。夜分等は往々にして失念することがあり、翌朝思わぬ失敗を晒す事がある。なお、なるべく巻き印(ワインディングインジケーターのこと)の付いている時計を所持するのが安全。→いや高いだろそれ
  • 時計は毎日系統の明らかな時報と比較すること。
  • 携帯用時計のほかに、家庭には地震の影響を被らない標準時としてクロノメーター(標準時の置時計)を備え置けば非常に便利。
いかがだろうか、昭和3年に書かれた書籍の内容である。うーむ深い、素晴らしい。
さすがに今時クロノメーター(クロノメーター検定に受かった時計のことではない)を自宅設置はないが、他は今でも全く同じである。
特に整備面や修理面の話は耳が痛い。金をケチって適当なところでやんなと。金がもったいないからやらないとかもってのほかですよと。「おれの時計は動いてるから大丈夫」とか、「10年くらいはオッケーまったく問題なし」といった物理法則を無視したマイルールなんか作っちゃだめよと。
あとは、「時計は側なんかどうでもよくて、大事なのは良い機械だ!」とか。
ふむふむそうだよねと。おさーんがアンティーク懐中に手を出してるのもこうした理由だしね。現代腕時計とは比較にならんからなー。

おさーんが一番興味深く読み、驚きつつ共感したのは、実のところこの付録なのであった。