またしても懐中時計である。そろそろもういい加減にしないと、1か月半くらい毎日違う時計を着用しても余裕で過ごせる状態なのだが、一昨年の年末セールにつられて買ってしまった時計。

この時計、ヤフオクでもeBayでもなく、ネットショップからの購入。記事にご紹介した、初めて懐中時計を購入したお店に並んでいたものだ。
それこそ最初の懐中時計を手に入れる前から並んでおり、その後もずっと並んでいた。
この時計をずっと眺めていたおさーんは、つい年末セールで少し安くなっていたのに気を許し、ポチってしまったのだった。

どうせ残ってたら買うんやし、今買ったほうが安いじゃんみたいな。
買わなくていいというベストな選択肢があるはずなんだが、どうしてもそこを選べないのが悲しい。

このお店は比較的よさげな状態のものを、簡易整備行い販売しているお店。ネットショップで懐中を扱うお店としては、わりと著名な店舗かと思う。
さすがにマサズパスタイムのような、フルレストアされた完全なものを取り扱うわけではないが、動作確認に加え可動部分の簡易洗浄&注油は行っているとのこと。→最初に買う前メールで確認してみた

オーバーホールではなく簡易整備なため、常用するなら別途整備が当然必要だ。だが特にヤフオクの、どうしようもない売りっぱなしのゴミを掴むこともなく、そういう意味において安全だ。
小売りなので価格もそれなりにするが、この内容なら総じてどれもリーズナブルだと思う。

このお店は、ごく初期に懐中時計を調べまくっていたころ見つけた。出てくるサイトは今風のオンラインショッピングサイトではなく、味のある昔ながらのホームページといった感じで、最初は正直かなり怪しんだ。
だが、クソ素人なおさーんでも、並ぶ商品の状態はマトモと見えるモノものばかり。
ちょいと怖いが、商品・価格共に良心的。この店は穴場と判断し、最初の懐中時計である0サイズマキシマはここで購入した。

後であちこち調べてみると、実はよく知られたお店で、穴場でもなんでもなかった。
このお店、自社HPでの通信販売のほか、ヤフーショッピングで購入ができる。
懐中時計好きならおそらく誰でも知る店かと思う。古時計の館がそのお店だ。



そもそも扱う商品の状態がわりとまともな上に小売りなので、ヤフオクやeBayと単純な価格比較してはいけない。特にヤフオクなどは宝くじ並みで、ごくごくたまに紛れ込むモノを引くのに、勝手に値段が付けられたゴミをいっぱい掻き分けるといった状況。
動作確認されたうえに簡易とはいえ手も入っているなら、多少のコスト差は全く問題ない。

今回購入したキーストンハワード・シリーズ8は、そもそも数量が少なく、調べても適切な相場が出てこない。ならば、安心確実を選ぶのが正しいと判断したおさーん。シリーズ0の相場から見て、つけられた価格も妥当と自己判断し、購入に至ったのだった。

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今回は2個目になるキーストンハワードの懐中時計。モデル1912、シリーズ 8と呼ばれるモデル。12サイズで23石の懐中時計だ。
ウォルサムとは違った魅力を持つキーストンハワード。試しにシリーズ0を買ってみたら、噂通りの高品位な時計でとても気に入ったおさーん。そうなると、もう少し小さいのも欲しくなる。

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文字盤はこれまでにないタイプのものでメタルダイヤル。ウォルサムなどでもそうだが、1920年前後になると、こうしたポーセリン以外の文字盤も増えてくるようになる。アメリカではちょうど時期的にアールな・デコが猛威を振るった時期。

この文字盤はダブルサンクっぽく金色の輪が入っているが、外側に模様のような加工が入る。また、文字盤全体に細かく凹凸が入っている。どうやって加工したのかよくわからんが、なかなかみごとなものだ。

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さて、シリアルナンバーからいつものデータベースを検索してみたのだが、キーストンハワードはウォルサムほどデータの整備がしっかりしていないようだ。つーか、入れればなんでも出てくるウォルサムが特殊なのかもしれない。

試しにこの時計のシリアル番号を検索すると、シリーズ 7 の17石と出てくるのだ。でも、ブリッジ上に23Jwelsと書いてあるしねぇおかしいよね。
いろいろ確認してみると、12サイズの23石はシリーズ 8といったお話らしい。よってこいつはシリーズ 8ということにしておく。

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ケースはハワード純正金張りケース。キーストンハワードは工場でケーシングされ出荷されている。キーストンはそもそもケースメーカーなので当たり前といえば当り前か。

この時計に用いられるケースは、”Keystone”ブランドまたは”Crescent”ブランドのいずれかなのだそうな。この時代、キーストンは他のケースメーカーも数多く買収しており、既にクレセントもキーストン傘下だった。

このため、ケースが純正かどうかは、ブランドロゴ及びハワードのロゴを確認すればある程度判断できる。実際に確認してみると、このケースはクレセントのものだった。

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※クレセントお馴染みの月星マークなケース

ウォルサムでやったように、ムーブとケースのバラ売り物件個別購入といった、ド素人のクセにありえない暴挙も犯すおさーんだが、さすがにこいつは後で泣くのが目に見えている。キースンハワードは純正ケース付きを狙うのが正しいやり方だ。→つーか常にケース付きが正しいんだってばよ!

なお、この時計に付くケースの側素材18K無垢、14K無垢、25年保証の14KGFのいずれか。今回入手した時計は14KGFだ。無垢ケース欲しいけど、無条件に10万以上積みあがるとなればまぁ無理だわなと。

ちなみにこの時計、調べてみたがかなり資料が少ない。以前購入したシリーズ 0は、当時のキーストンハワードのトップグレードということもあってか、わりと多くの資料もありデータベースもちゃんとしてた。だが、こちらの時計はデータベースの内容以外の資料に乏しい。加えて頼みの綱のデータベースも17石のシリーズ7が出てくるといったイマイチな状況。
(なお、シリーズ6・7.8の3つはいずれも同じモデル、このため大きく仕様がかけ離れることはない)

結局、見つけた資料はほとんどないのだが、POCKET WATCH DATABASEにアーカイブされていたものを記載しておこう。
以下ハワードのカタログ。多くの時計が紹介されている中から、シリーズ8・23石の抜粋。

howard_catalog_1918_siries8
※1918年の”The Howard Watch Catalog No.7(1917)"の一部
Pocket Watch Databaseより抜粋したもの

世界初の薄型モデルタイムピースで、ハワード基準の精度を実現しています。
各時計は、温度・等時性・5姿勢に調整されています。
23個のピジョンブラッドルビーとサファイア、厳選されたルビーのパレットストーン、トレインとテンプにはオリーブ色の穴の開いたジュエルが使われています。
ハワード・バランスホイール、ダブルローラー脱進機、埋め込み式ガンギ車。

もうひとつアーカイブされていたカタログも載せておこう。こちらは21石のカタログだが、さして支障はないだろう。お値段もしっかり入ってるので、ケース素材の差による価格差など、ご覧いただくと面白いと思う。

E.Howard-Series8-1909

さて、上記のカタログとPOCKET WATCH DATABASEから得られる仕様について記載してみよう。
以下機械語翻訳に加えおさーんによる適当な意訳である。

◆以下カタログの記載内容(かなり適当な意訳付き)◆


12サイズ、21石、極薄
ブリッジ(1908年)モデル
ハンティングまたはオープンフェイスモデルで、時刻合わせはペンダントセット

世界で最も優れた薄型モデルで、タイムキーパーとして、初めてハワード基準の精度を達成した薄型モデル。5姿勢及び温度と等時性の調整が行われています。
ハワードの時計はすべて、工場を出る前に専用ケースでケーシングを行い出荷されます。ムーブメントとケースは別売りではありません。

商品説明と価格→※価格は割愛
12サイズ、21石、極薄ブリッジ(1908年)モデル

◆ジュエル
21個の極細宝石、オリエンタルサファイアのパレットストーン(アンクルの爪石)を除き、すべての厳選されたピジョンブラッドルビー(鳩の血のような鮮やかなルビー)を使用しています。
テンプ、アンクル、ガンギの回転する円錐形のホゾには、ルビーの伏石が付きます。→ここ難しいけどこんなニュアンス


◆テンプ、ガンギ、安全香箱
有名なハワードのテンプは、特に入念に焼き戻しされており、最も過酷な使用や振動にも耐えます。
ダブルローラー脱進機と埋め込み式のスチール製ガンギにより、非常に軽量です。
特許を取得した安全香箱は、スプリングの巻き過ぎによる負担を防ぐための防止機能を備えています。

◆ダイヤル
文字盤は最高級のエナメル製のハンドメイドで、時・分の数字が特徴的です。→このインデックスハンドメイドかよ!

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とまぁカタログの内容はこんな感じ。ところどころおかしいけどお許しあれ。
シリーズ0の広告もそうだったが、ウォルサムのムーブメント広告よりもあっさりした内容。ウォルサムのカタログは、これでもかとその贅沢な材質や機能をあますところなく伝えていたのに対し、ハワードの場合、そのあたりはあっさりとしたもので、信頼できる高品質な時計であることのアピールに重点が置かれているようだ。イメージ戦略というやつだろうか。

なんとなくだが、現在の広告事情を垣間見たおさーん。日本製の機器はその仕様や機能の詳細を事細かく説明し、何がどう凄いかをアピールするのがわりと普通。例えばスマホなら、カメラの画素数とか防水機能とかがずらずら並ぶやつ。オールドセイコーのカタログなどもそうだが、古くから日本はこの傾向が現在も続いている。

これに対し、例えば外国製品の広告は、製品の仕様に重きを置かず、その製品を使いどうやって生活が変わるか、何に使えるかを見せることで製品をアピールするのに似ている。AppleなどのCMが恒例。


話が横道なので、元に戻して実物のムーブメントをご覧いただこう。

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キーストンハワードは、はっきりとウォルサムの見た目と違うブリッジ構造のものが多い。最近キーストンハワードに手を出しているのは、実は見た目が気に入っているのがその理由。こちら、シリーズ0ほどでないにせよ、とても見事なムーブメントだ。
ブリッジと共に目を引くのは、やはりシリーズ0と同様、鳩の血のような鮮やかなルビー。画像ではわかりにくいのだが、シリーズ0ほど大きくはないが、これもほんとにキレイなのだ。外観上のアクセントとしてもとても素晴らしい眺め。

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なかなか画像ではわかりにくいが、ブリッジの装飾は、うっすらと入ったコート・ド・ジュネーブだ。キーストンハワードは、ダマスキンをあまり使っておらず、ジュネーブ装飾のものがほとんど。

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いやコレ、伝わんないと思うけど、ホント仕上げ綺麗なんだよね。もうピッカピカですよそこかしこ磨き上げられて。2つの穴車なんか鏡のような鏡面仕上げ。いや見事。


仕様で補足をしておくと、この時計の製造数量は7,500個。シリーズ0の半分くらいと結構少ない。
加えて、キーストンハワードのハイグレードモデルは、そのほとんどが21石。23石の時計はそもそも少ないのだ。著名なもので言うと、シリーズ0のジュエルドバレル仕様(前におさーんが手に入れたもの)とジュエルドバンキングピン仕様(香箱に石はないが代わりにドテピンが石)に加え、今回手に入れたシリーズ8くらいになるのではないかと思う。

おっと、ひとつだけ忘れてたが、ブルーサファイアと呼ばれる超高額プレゼンテーションウォッチがあったな。エドワード・ハワードという名の時計で、創業者の名前が付けられた物だ。これもジュエルドバンキングピンの23石。

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※キーストンハワード ブルーサファイア(アンティーク時計Lumaから引用)
※キーストンハワードの銘品、超絶コレクターズアイテムで死ぬほど高い→たぶん高級なクルマ1台分くらい
※クリックすると商品ページ(売却済み)へリンクするので是非一度見てほしい

ちなみに、ウォルサムなどの23石はジュエルドバレルだが、ハワードでジュエルドバレルはほとんどない。そのほとんどは、先に書いたジュエルドバンキングピンで、ドテピンに石を使ったものだ。ちなみにジュエルドバンキングピンはウォルサムでは聞いたことがない。おそらくないのだろうと思う。

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マサズパスタイム商品画像より引用

アンクルを爪の反対側からみたような画像だが、ドテピンにルビーが使ってあるのがわかるだろうか。これ、経年劣化や衝撃で石が割れると悲惨なんだろうな。削り出しに相当労力(工数)かかるわなこんなの。

このシリーズ8でジュエルドバレル仕様はお目にかかったことがないので、おそらく上記画像と同様、バンキングピン(ドテピン)にルビーが使ってあり、それで23石なのではないかと思う。

加えて、カタログにもあるように「薄型」がキーワード。この時代、薄さが流行りだったのか、同時代のウォルサムにも薄型モデル(コロニアル)が存在する。
コロニアルは薄型のため、こちらもケーシングされて出荷されていたようだ。

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※これも画像ではわかりにくいが、12サイズのムーブメントとしてはかなり薄い

いつものアプリで簡易測定も行ってみたが結果は上々。ダイヤルアップが-20秒、ダイアルダウンで-5秒強、ペンダントアップ-38秒、ペンダントダウン-20秒。簡易整備がほどこされていることもあり、わりとまとまった状態だ。ちゃんと整備すればかなりの精度が期待できそう。

さて、手に入れたキーストンハワードはこれでふたつ。こうなるとオールドハワードも狙ってみたいところだが、見てるとかなり高そうな気がするので、たぶん無理なんじゃないかと思っている。

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HAWARD Siries8(Keystone)
製造年:1912年頃
モデルナンバー:Model1912
グレード:Series8
キャリバーナンバー:1172810(手巻)
サイズ:12s
石数:23石
ムーブメントタイプ:オープンフェイス
ムーブメントセット:ペンダントセット
生産数量:75,000個
振動数:18,000/時(5振動)
ケース:Crescent Watch Case Co. (Keystone)・GOLD FILLED 25年保証・オープンフェイス
文字盤:よくわからん、ポーセリンではないと思われ