誰でも知ってるオメガである。これまでの収集癖からすると全然脈絡がない時計だが、なんかこう、シーマスターなんとなく欲しかったんだよな。
なんとなくで逝くんかお前!などとひとりツッコミを入れてみたいところだがまぁいいか。

ちょうどオークションで見かけたこの時計、「これかー!」見た目一発で気に入ってしまい、素性もわからず「ポチッとな」。
落札してから慌てて素性を調べる愚かさよ。

ちなみにシーマスターといっても、今風のダイバーみたいなヤツではない。見た目古い感じの至って普通な時計である。でもこの時計は記念すべきおさーん初のスイスメイドだ。

どことなくマーベルとかローレルならありそうな文字盤。おさーんにとっては違和感なし。むしろ親近感を覚える文字盤だ。

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さて、実はもなにも、おさーんオメガ全く知らんのである。胸を張ってどこまでもあーもうまったくわからん。

だがまぁ、セイコーの歴史調べてると天文台コンクールの話が出てくる。その頃コンクールで毎度ぶひぶひ言わせてたのは、オメガやロンジンだったってのはお勉強した。
また、懐中時計でもオメガはたまに見かける。きっと明治から昭和にかけて、オメガも憧れのブランドのひとつだったんだろうなぁくらいはわかる。でもそのくらいしか知らん。

オールドセイコー収集を始めた時のこと。会社の先輩がスピードマスターとシーマスターを持っているというので、一度だけ見せてもらった。
スピードマスターはご自身のもので、シーマスターは亡くなったお父さんのものだそうだ。

おさーんの中で大ヒットだったのは、それまで名前くらいしか知らなかったシーマスターだった。
てっきりダイバーみたいなやつが出てくるかと思ってたら違ってた。なんかこう、これいいよねカッコいいよねみたいな。これがシーマスターを気にいった経緯だ。2年くらい前のお話。

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※龍頭もちゃんとオメガマーク、これは嬉しい

それ以降、なーんとなく気になるシーマスター。とは言いながら買おうまでは思わんと。まだほかにも欲しいのあるし、そもそも相場も知らんし。
とかなんとか、しれっとさも興味ありませーん的な雰囲気醸し出しといて、レコメンドで出たヤツに間髪入れず秒で「ポチッとな!」するんじゃねぇよまったく。

イヤ、なんか見た目がボンベダイヤルっぽくて。ノンデイトだしちょうど集まった腕時計の年代に近いんじゃないかと思って。

手に入ることが確定し、届くまでの間にシーマスターをごそごそ調べだすおさーん。まったく逆でしょそれ。
しかし事は急ぐのだ。届くまでに時間がない。可及的速やかな調査が必要なのだ。
というわけで、たいした情報も持っていないが、この時計についてちらりとご紹介。
と言いながら、今この瞬間調べてるわけで、知識ゼロですごめんなさいご容赦くださいもうしません。→絶対またやる

この時計、裏蓋の刻印と少し調べた結果から類推するに、シーマスターのRef.14390-61-SCというモデルらしい。モデルコードが14390で、61が製造年で、SCはセンターセコンドか?
このモデルコードでさらに調べてみると、Cal.285と呼ばれるキャリバーを搭載しているようだ。

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さらにいろいろ見てみると、Cal.285はどうやら30mmキャリバーと呼ばれ、「名機!」と多くの記事に書かれていた。その書きっぷりから、どうやらオールドオメガでも人気があるらしい。
おぉホントかそれ?。といいつつ鼻の穴が膨らむ膨らむ。「いやーキタコレさすがおさーん!」とかうぬぼれっぷりがクソ。

しかしながら、よくよくいろいろ読み進めてみると、なんとなく事情が分かってきた。Cal.285が名機というわけではなく、Cal.285を含む径30mmのムーブメント群が名機というわけだ。
この30mmキャリバーと呼ばれる機械は、1939年から1963年頃まで造られたらしい。

なんだそれ、だったら名機っていっぱいあるじゃん。つーか、オールドオメガの結構な割合なんじゃねそれ。

なお、後年オメガ自社製造キャリバーはETAに切り替わってしまった。だから自社製キャリバーを搭載する時計に対し、今なお一定の人気があるというわけである。

では、30mmキャリバーとはなんぞやということで、変遷を追ってみよう。
オメガは1939年にCal.30というキャリバーから30mmキャリバーをスタートさせる。Cal.30はスモールセコンドのキャリバーだ。

その後Cal.30はCal.30T1,30T2を経て1941年にCal.260となり、以降Cal.269までが26x系。
一方1940年に追加されたセンターセコンドのキャリバーがCal.30SCT1。こちらはCal.30SCT2を経て、1941年にCal.280となりCal.286まで生産された。これが28x系。

これらCal.30系・26x系・28x系のキャリバーを総称したものが30mmキャリバーと呼ばれており、名機と言われているそうな。

中でもCal.261とCal.281はクロノメーターの名が付いており、これは正真正銘ホントの名機に違いない。

だが、少し他も調べてみれば、自動巻でも名機ってのがある。他にも「伝説のキャリバー」とか出てくるんだわこれ。
ムーブメントがETAになったことから、まぁ多分ETA以前の自社製キャリバーはとりあえずなんでも名機と呼ばれているのだろう。大人の事情は詮索しないが吉だな。

30mmキャリバーの謂れは、先に書いたようにキャリバー径が30mmとそのまんまだ。
径が30㎜なのは、スイス天文大コンクールの審査対象が30mm以下のキャリバーだったからである。そして好成績を残すと。セイコーの歴史にも出てくるジュネーブとかニューシャテルのコンクールだ。

うん、30mmキャリバーってやっぱホント名機かもしれん。

さてさて、この時計に搭載されるCal.285だが、このキャリバーの内部コードは30SCT5-PC-AMというらしい。
見つけた資料によれば、この暗号のような文字列は、17石の耐震付き耐磁性型センターセコンドキャリバーということだそうな。(PC=耐震付、AM=耐磁気性)

Cal.285は1958年から生産されており、その生産数量はCal.285だけでも158,000個!
うぉい!Cal.285だけでもめちゃめちゃあるやん。

というわけで、ムーブメントの話はこれくらいにして、漸くここでようやくシーマスターのお話だ。
シーマスターはオメガ創立100周年となる1948年に発売され、26x系・28x系双方の30mmキャリバーが搭載された。もともとは軍用に開発された防水機能を民生用に転換し、その防水ケースを纏った時計に付けられた銘である。

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あと、調べて気づいたが、このキャリバーは手巻きだった。
あっぶねぇポチるとき全然そんなの考えてなかったし確認もしなかった。この時代のシーマスターにもきっと自動巻はあるわけで、60年代以降はむしろそっちが主流だっただろう。
いや手巻きでホントよかったわ。

とは言いながら、買う前にキャリバーの写真は見たので自動巻なら速攻気づいたと思う。
なお、お手元確認の結果秒針規正は付いてなかったが、気にもならんわおさーん。

インカブロックの耐震装置が付いた17石のCal.285の見た目は上質で非常に良い。なんというか、色合いはマーベル19石赤メッキなのだが、このスッキリ感はクラウンのキャリバーを彷彿とさせる。またこれルビーもキレイで、見てて飽きないキャリバーだ。

そしてなによりムーブメントがとてもキレイ(汚れてない)だ。これは大きな安心ポイント。防水ケースでムーブメントが汚いのは、どう考えても程度はお察しである。いくら見てくれが良かったとしても、雑な扱いに加え手も掛けてもらえず、中身が腐っている好例だ。

この時計、はっきりしたことはわからないが、さらっとみたところ、やっぱ1961年の時計らしい。やはりリファレンスナンバーの "61" は製造年ということか。

1961年といえば、グランドセイコーだけでなく、キングセイコーも発売され、「はまぐり」もまだ売られていた頃だ。ロードマーベルが売られてた頃、本場スイスはこんな機械作ってたんだと。勝手に近い時代かと思い込んで買ってみたがビンゴだったよなんか嬉しい。

1961年という年は、実は国内の時計業界にとって戦々恐々の年だ。日本では1961年に輸入税率が改訂され、腕時計の輸入自由化がなされた年なのだ。

関税が撤廃され、海外から高品質な時計が安く入ってくるとなれば、国内時計メーカーは死活問題。これに対抗するため、セイコーはロードマーベルで高級時計に先鞭を付け、満を持したグランドセイコーを対抗兵器とし国内市場に臨んでいた。
他の国産メーカーの動きも同様で、この時期に多くの国産高級腕時計が誕生したのは、そうした背景からである。

ふらふらと手に入れた時計だったが、その素性をみてみれば、まさにこういう時計と戦うために生み出されたのがロードマーベルでありグランドセイコーだったのだ。
これは感慨深い、あかん全米が泣く。→泣かんて!

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裏蓋はこんな感じ。お馴染みトレードマークのシーホース付き。オメガはやっぱこれなんだろうな。

セイコーは彫も浅くて消えちゃったり腐っちゃったりして散々だが、これはディテールがしっかりしておりとても良い。

あと文字盤がとてもキレイなのはリダン済みのようだ。別にいいのよリダンでも。
オメガの30mmと言えば、ショップの値付けは15万から20万台である。オクでも10万くらいは普通にする。だが、そうした物でも60年前の物ともなれば、機械部分に多少の腐食が有るのは普通だ。
シーマスターは防水ケースに入っているためまだ多少はマシなのだが、それでも腐食がほとんど無いものは数も少ない。

これはとにかく機械の程度が良いのだ。と言うか機械を最優先したら、これが最も良いものだった。
だからダイヤルがリダンでもさして問題なかったりする。

また、古時計にありがちな話として、尾錠だけ取っ払って別で売られてることがほとんどな国産時計だが、こいつはちゃんとオメガ製の尾錠が付いている。これも嬉しいポイントである。ちなみにベルトもオメガの新品ベルトだった。

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オールドでもムーブメントがキレイ。ケースは裏蓋に少々傷があれども、過度な磨きは入っておらず、エッジもそれなりに残ってる。加えて龍頭・尾錠に加えベルトまでしっかり揃ってる。

こうなれば、リダン文字盤の多少の怪しさなど全然目をつぶる話だ。寧ろ、リダンのお陰で価格もすこぶる値打ちだったのだ。
機械目当ての買い物としては全然悪くない、と言うか文句の付けようが無いのだった。

というわけで、何も考えずに流され落としたオメガの時計、落としてから素性を調べ、届いた時計を確認してみたら、これはこれでなかなかのものでござる。

なお、これ以上あまり深く調べると、お財布事情にろくでもないことが起こるのは確実だろう。これ以上深堀も詮索もしないようにする。絶対する!。→一級フラグ建築士

でも知ってしまったからには、Cal.30直系のスモールセコンドだけはもうひとつだけ追加したいところか。

ちなみに、時計は1日掛けて到着したが、到着時の時刻ずれが+3秒とちょっと驚く。いつものアプリで簡易測定してみた。

ダイアルアップ:-25秒
ダイアルダウン:-15秒
ペンダントアップ:-2秒から+6秒を行ったり来たり

数値的には良さげだが、ペンダントアップで安定しないので、汚れなどあるのかもしれない。精度的には問題なさそうだが一度OHするか。
手持ちで唯一のスイスメイドは、とっても気に入ったので永久保管決定!

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OMEGA Seamaster 
製造年月:1961年頃
モデルナンバー:Ref.14390-61-SC
キャリバーナンバー:Cal.285(手巻)
石数:17石
振動数:18,000回/時(5振動)
ケース:SS