懐中時計のメンテナンスである。今回整備を行うのは、Waltham Vanguardの3号機。
なぜにこいつを選んだかというと、稼働試験をしていて気づいたことがあったからだ。じつはコイツ、ぜんまいを巻くときに龍頭が滑ることがあるのだ。それも結構な頻度で。

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ヴァンガードは3つもあるので、不具合あるなら売り飛ばせばええやんというお話もあるのだが、この時計はできれば残したい候補。
前回記事で紹介したが、手元にあるヴァンガードは3つ。いずれもインジケーター付きだが、どれも微妙に年代が異なるため仕様も異なる。以前の記事に使った仕様一覧を引用しておく。

時計製造年時刻合わせ姿勢数鉄道時計ケース
初号機1915年レバーセット5姿勢10KGF
三号機1918年ペンダントセット6姿勢×STARLING
弐号機1926年ペンダントセット6姿勢×14KWGF

さて、この3つのうち、公認鉄道時計は初号機のみ。だからこれは残したい。
残り二つは時刻合わせがペンダントセットだ。そうなるとこれもバリエーションの違いとしてどちらはか残したい。

では残りふたつのうちどちらを選ぶか。弐号機は最も年式が新しく、ダマスキンが省略されているから贅沢さを以て三号機を優先させたい。だが弐号機はレタリングが黒なので、これも見た目が変わって面白い。つーか、装飾が簡略化されたのも比較材料としては面白い。

というわけで、結局処分品を選べぬおさーんは、とりあえず初号機→三号機→弐号機の順で優先順位を付けるにとどまった。
稼働させるにあたり、初号機は最もコストがかかりそうだったので、三号機に手を付けたワケであった。ふぅなげぇよまったく。

というわけで、腕時計メインだが、懐中時計もやってくれるお店に整備に出してみることにした。
ホントはマサズパスタイムに持っていきたい。だが、おさーんの財力では、気合入れて整備する時計以外はあそこにお願いするのはかなり厳しい。16sのModel1908マキシマやキーストンハワードのシリーズ0といった、元々状態も良い手持ちの高価なとっておきくらいがやっとだろう。それも資金をかなり貯めねば叶わない。

で、時計をお店に送付したら数日して返信が来た。
曰く、時計そのものはテンプが元気に動いているし、振り角も十分。加えて油も残っているようだからメンテナンスはまだ少し先でよいだろうとのこと。ただし、一部破損個所があるらしい。
破損個所はワインディングインジケーターを動かしている歯車のホゾ。ホゾが破損し、軸受けから外れていたらしい。

とりあえず応急処置として、ホゾは確かに傷んではいるものの動くようで、軸受けにはめて稼働試験をしているとのこと。時計そのものの機能に大きな影響はなく、インジケーターも動いているようなので、このままでも大きな問題はないとのことだった。

なお、巻き上げ時に滑る現象については、ネジと歯車を取り外し、再度噛み合うように組み上げたところ機能回復したとのことである。

ふむ、応急処置的な状況ではあるが、まずは大丈夫というところか。まぁなんとかなったのなら、完璧を求めてレストアする必要も今すぐにはないのでこのままいくか。

というわけで、ヴァンガード3号機は使用に耐えうる状態となった。
ただ、おさーんとしては気合入れて整備出したので若干不完全燃焼ではある。加えて、分解整備したわけではないので、費用もほとんど掛かっておらず、試験までしてもらって申し訳ない気持ちもあったりする。

というわけで、「では、もうひとつ送りますので、そちらをキッチリメンテナンスしていただけますか?」というお話にして、別の時計を送ることにしたのであった。

・・・つづく

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Waltham Vanguard(ワインディング・インジケーター付き)※三号機
製造年月:1918年前後
モデルナンバー:Model1908
グレード:Vanguard
生産数量:177,450個
キャリバーナンバー:22053589(手巻)
サイズ:16s(43.18mm)
ムーブメントタイプ:オープンフェイス
ムーブメントセット:ペンダントセット
振動数:18,000/時(5振動)
ケース:Waltham Silver925 オープンフェイスケース
文字盤:ダブルサンク・エナメル文字盤