えー今回は、これまでおさーん手持ちの時計と集めた情報で、ウォルサムのリバーサイドマキシマについて整理してみたい。国内のサイトをいろいろ見てみたが、マキシマを単体で紹介している記事はあっても体系立てて紹介しているものは見かけなかった。そうであればなんかの役に立つかもだ。

例によって長文になりそうなので、2回に分けておくことにする。
まずは、リバーサイド・マキシマご紹介の前に、ウォルサムで用いられていたモデルとグレードについて触れておく。次にウォルサムで販売されたマキシマの各モデルとその内容についてご紹介する。
アジェンダはこんな感じだ。
  • ウォルサムのモデルとグレード(今回)
  • ウォルサム リバーサイドマキシマのラインナップ(次回)
今回は1回目なので、ウォルサムのモデルとグレードについて触れてみよう。では行ってみるか。



◆ウォルサムのモデルとグレード
アメリカ製懐中時計には、各サイズのベースとなるムーブメントを指し示すモデル名が付いている。モデル名はサイズ別で付番されており、製造開始年がそのままモデル名となっている。
また、同一モデルでムーブメントの各所に手を入れ差異化されたものにグレードが付く。モデルが同じであれば、グレードが違えど基本構造やベースとなる部品は共通だ。
グレード名はわかりやすい銘が付けられており、ウォルサムで言えばRiversideやVanguardといったものが銘。モデルをまたいで展開したグレードも多く、モデルやサイズが異なってもグレードでおよそのランクや用途などがわかるようになっていた。

アメリカ懐中時計の説明記事にも記載したが、今では当たり前な部品が共通という概念、実はこれがアメリカ製懐中時計で実現された最も画期的な事なのだ。
これを最初に考えたのは、アーロン・ラフキン・デニソン。ウォルサムの創始者の1人にして、後にイギリスでデニソンウォッチケースカンパニーを興す人物。
彼は交換可能な部品を共通化して時計を量産するアイディアを思いつき、それをエドワード・ハワード(後のE.Howard & Watch Co.の創始者)に相談。デビット・デイビスとハワードの資本を投入し、3名でウォルサムの祖となる会社を創立する。それと共に、交換可能な部品を使って時計を組み立てるという概念が、世界に先駆け実現することになる。
これがアメリカ懐中時計が初めて実現した部品標準化であり、それまでの概念を根本から変えた時計製造の手法だ。
このため、アメリカの時計製造において、デニソンはとても著名な人物。時計製造の歴史を拾うと、今でも必ず彼の名前と肖像画は至るところで目にする。

◆主要なグレードについて

ウォルサムでは古くから後年までかなりの数のグレードがあるが、比較的よく見るグレードを抜粋して並べてみる。ただしトップの2つ以外は、はっきりした資料が存在しないため、拾った情報とおさーんの妄想を含む。
  • American Watch Co.(以下A.W.Co.):ウォルサムの最上位グレード。製造数が少なく希少で、コレクターが手放さないため、現在もめったに出回らない。12サイズや16サイズにハイグレード最上位モデルを販売していた。あまり目にすることがないため、現在はMaximusの方が著名ではあるが、ウォルサムの歴史においては一貫してこちらが最上位。(18石~23石)

  • Riverside Maximus:Model1888から販売開始されたグレード。従来のAmerican Watch Coに匹敵するトップグレードのひとつ。以降ハイグレードの販売面ではこちらがトップグレードのメインとなった。各サイズに展開しており、0サイズ、12サイズ、16サイズは現存数も比較的多く、良く目にすることができる。現在ウォルサムのハイグレードといえば、多くの場合これを指すことが多い。(19~23石)

  • Vanguard:18サイズと16サイズに展開した公認鉄道時計のハイグレード。特に16サイズは生産数量がかなり多かったため、現存数が多くハイグレードなのに価格面でかなりお値打ち。造りはMaximusの次に良く、インジケーター付きもある。ウォルサムを買うならこれがおさーんのお勧め。(19~23石 )

  • Crescent Street:古くからあるグレード。公認鉄道時計としてはヴァンガードに次ぐハイグレード。16サイズ21石のインジケーターなどは現在も希少で高値。(19~21石)

  • Riverside:6サイズのModel1873から登場し、各サイズに幅広く展開したミドルグレード上位の中心となる銘。現存数も多く、現在も市場にたくさん出回っている。ウォルサムでは最もポピュラ-な銘だ。鉄道時計としても使われていた。(15~21石)

  • PS. Bartlett:かなり古くからあるグレードで、1900年以降も販売されていたミドルグレード。ちなみに、銘の謂れは創業初期の従業員でネジとプレートの責任者であった”パッテン=サージェント=バートレット”の名に因んだものと言われている。

  • Royal:こちらもわりと古くからあるグレード。ミドルグレード下位のグレードとなる。こちらもおそらく著名な従業員に因んだ銘かと思われる。

    ※Appleton Tracy Co. Am’n Watch co. Am Watch Co. 他旧いグレードは除外


◆アメリカ製懐中時計ハイグレードモデル


アメリカ製の懐中時計は1950年代半ばから作られ始めるが、各社よりハイグレード製品が登場するのは少し経った後。さらに各社のハイグレードモデルの本格的な展開は1980年代初頭に鉄道時計規格が制定されたころからになる。鉄道時計規格に準じた時計の生産によって、品質が向上し規模も拡大。また、明確な基準が制定されたことで、区分けが簡単となり、グレードによる差異化が急速に進んだものと思われる。
なお、ハワードだけは特別で、創業当初からキーストンに商標が買われるまで(19世紀末まで)一貫してハイグレード製品のみを生産し続けた。このため、19世紀までのハワードはオールドハワードと呼ばれ、現在もかなりの高値で取引されている。


◆【ご参考】Ameican Watch Co.(A.W.Co.)グレードのハイグレードな時計

ウォルサム最上位のグレードはAmerican Watch Co.グレード(以下A.W.Co.)と呼ばれる。A.W.Co.はこれまでご紹介していないが、ウォルサムのトップグレードなだけあって逸品が多い。
以下に1970年代以降の著名なものを古い順から並べておく。どれも目にすることは稀で、高価な時計ばかりだ。ケースも普通は金無垢になるので、通常モデルに比べると飛び抜けて高価になる。

あー、参考情報なのでスルーしてOK。こんなのあるんだーふーんくらいのお気楽感で。


Model1872 16s 19J及び21J A.W.Co.グレード(1873-1891)

1872_1

1872_2
HODINKEEより引用

Model1872は鍵巻きから龍頭巻きへいち早く対応したモデルであり、当時は画期的だったことから長い間名機と言われていたようだ。ムーブメントの大きさと時刻設定のレバー位置が少々特殊なので、専用ケース以外は合わない。Model1872自体は1873年から20年ほどの間生産されていたが、このうちA.W.Co.の生産数は19石と21石を合わせても1,930個と少なく大変希少。コレクターが手放さないため、現在お目に掛かることはほとんどない。もし出てきたらめっちゃ高いはず。
この時代のダマスキンは、後年のマキシマよりも模様が細かく緻密な加工が施されている。その仕上げは超絶で素晴らしい以外の言葉がない。グレードはA.W.Co.以外にもAm'n Watch co.やAm Watch Co,といったものが用意されていた。Model1872は「ナナニー」という愛称で呼ばれている。

Model1888 16s 19J及び21J A.W.Co.グレード(1889-1901)


マサズ パスタイムより引用

Model1888はModel1872の後継モデル。Model1888にはいくつかのグレードが用意され、A.W.Co.を筆頭にMaximusやRiverside等のラインナップがある。この時代も21石が最上位。特にA.W.Co.には、ウォルサムでこれだけと言われる金無垢の香箱が実装されているとのこと。
こちらもModel1872ほどではないが、細かく緻密なダマスキン装飾が施された非常に美しいムーブメント。まだ手作業部分が多かったのだろうと思う。以降は機械化が進んだか、徐々に緻密さが失われ、簡素な仕上げとなっていく。
ダイヤルには、グレードの略称であるA.W.Co.の銘が書かれているものが多く、これが非常にカッコよい。このモデルにはA.W.Co.とMaximusの両方が存在するが、A.W.Co.の方が希少でかつ高価なため、これもめったに出てこない。また、往年の社名を使った古いグレードは、このモデルの後年整理され、Riversideなどの銘に切り替わる。こちらの愛称は「ハチハチ」

Model1899 16s 21J及び23J A.W.Coグレード(1900-1904)


マサズ パスタイムより引用

Model1899はModel1888の後継モデル。こちらにもA.W.Co.がMaxmusと共に用意された。A.W.Co.の通称はブリッジモデル。これまでのウォルサムのブリッジプレートとは異なるもので、見た目がとにかくカッコよい。Model1888のA.W.Co.はキーストンハワード立ち上げ時に、ハワードへもOEM供給されたムーブメントで、ハワード シリーズ0の一部がこれに該当する。
こちら生産数は21石・23石併せて3,660個、数も少なくめったにお目に掛かれない高価な時計だ。Model1899のMaximusは現在も結構なお値段だが、A.W.Co.に比べるとかなりのお手頃価格となる。

Model1894 12s 21J  A.W.Coグレード(1898-1904)


マサズ パスタイムより引用

ブリッジモデルの12サイズ版。こちら生産総数2,003個と16サイズのA.W.Co.よりもさらに少なく、おさーんはまだ売り物にお目に掛かったことは無い。Model1894もA.W.Co.とMaximus両方が存在する。

Model1907 16s 23J Premire Maximus(1908)

s-l1600 (1)

s-l1600 (6)
※Bayの画像を引用

Maximusの銘が付くがA.W.Co.グレードの時計。1908年に販売されたもので比較的新しいが、まさにウォルサムのトップグレードとしての条件を具備した時計。生産総数は1,201個。ブリッジモデルをベースとし、各所手が入ったプレミア・マキシマは、後年のウォルサムのトップグレードとして現在も結構有名。現在の値段はサンプルが少なすぎてよくわからないが、まぁ相当なお値段であることは間違いない。
この時代ケースとムーブメントは別売りだったが、この時計は金無垢ケースにケーシングされて販売された。日本向けのカタログにも掲載されているので、当時正規で少量持ち込まれたと思われる。

◆マメな話①:ウォルサムの社名
ウォルサムは何度も社名を変更している。そして、会社名をグレードの銘に使っている。
以下変遷は途中からの社名遍歴となるが、創業当初の1850年代は頻繁に社名が変わっていた。


Appleton, Tracy, & Co.(1857) → American Watch Co.(1859) →
American Waltham Watch Co.(1885) → Waltham Watch Co.(1907)


何のことは無い、1885年までは、アメリカンウォッチ社のアメリカンウォッチグレード(A.W.Co.)が最上位ということだ。実に紛らわしい。
アメリカンウォッチの前の社名である、アップルトントレーシーも古いグレード名として使われていた。

◆マメな話②:略称
American.Watch.co.グレードはA.W.Coの略称で実際使われていた(ウォルサムの旧社名でもあるけど)。だが、これとよく似た名称がそこかしこに氾濫するのでこれはこれで非常にややこしい。
ハイ!ここテストでまーす!。
  • A.W.Co.→ウォルサムのグレード又は旧社名
  • A.W.W.Co.
    Wがひとつ多いこの略称、ウォルサムのムーブメントのプレート上または、文字盤でよく見かける。これはグレードではなくウォルサムの会社名(American Waltham Watch Co.)。
  • A.W.C.Co.
    今度はCがひとつ多い略称。ケースの刻印でウォルサムの時計に限らずこの銘を見ることがある。大変紛らわしいが、ウォルサムとは何の関係もなく、ケースメーカーであるアメリカンウォッチケースカンパニー(American Watch Case Co.)の略称。
  • C.W.C.Co.
    これもケースの刻印でよく見かける。ご推察のとおりケースメーカーでクレセントウォッチケースカンパニー略称(Crescent Watch Case Co.)
  • K.W.C.Co.
    同じくキーストンウォッチケースカンパニーの略称(Keystone Watch Case Co.)
※ウォルサムはケースも作っているが、ウォルサム製のケースは、略称ではなく"WALTHAM"という銘が入っている。

というわけで、ウォルサムにおけるモデルとグレードについての説明と、A.W.Co.グレードの逸品をご紹介した。今回はウォルサムのモデルとグレードについて触れたが、アメリカの時計メーカーで生産された懐中時計は、どのメーカーもグレードとモデルの考え方は同じ。

次回は本題のリバーサイド・マシキマの各種モデルについておさらい。
では。