今回は変わり種な腕時計。懐中時計のムーブメントを搭載した腕時計だ。
一応腕時計ではあるが、中身が懐中なので懐中時計に分類しておく。だって腕時計っていっても中身130年近くも前のもので説明しきらんし。

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これはですね、ハワードです。キーストンじゃなくてオールドのほう。オールドハワードのシリーズⅤ。入手はいつものeBayで。

1.入手の経緯
当然ながらちゃんとした懐中時計を狙いたいおさーん。だが、過去数回トライしていずれも惨敗であった。なんでこんなに高いのよまったく。だが、これに関してはムーブメントを裸で狙うわけにもいかない。純正ケースの単品売りなんざ見たこともないので、一生裸で過ごすことになるためだ。
なんとかならんかなーと考えていた時に指値出品されていたのがこいつ。

腕時計化されているのだが、そのサイズから考えると邪道もいいところ。その実ムーブメント単品と何ら変わらんのだが、形は違えどもケースが付いているだけまだマシな状態である。
加えて売れ残っていた価格もお支払い可能な金額。まぁ着けてはおそらく歩けんが腕にはめられんこともないし、手に入るならこれでええか。それこそ数年かけてケースなんとかする算段考えるのもありかと。(いや一生何ともならん可能性がかなり高いんだが)

そんな邪な考えで、さらに15%ほど値下げ交渉もして送料加えてピッタリ$450でお手元へ。相場がよくわからんので高いんだか安いんだかわからんのだが、以前数個見たものはケース付きで9万から15万くらいだった。どれもケースは入れ替えられていてその価格。ムーブメント単体と考えても多少は安いんだろうきっと。そう思い込まんとやってられん。
なお、この値段で手に入れられた理由は、たまたまか、腕化されているのでコレクターから完全にスルーされたのではないかと思う。きっとこの値段が高いとかいう話ではないだろうと信じたい(震え)。

2.ハワード シリーズⅤについて

◆オールドハワード

オールドハワードと言えば、ウォルサムの創設者の一人であるハワードさんが、ウォルサムの前身となるボストンウォッチが売却された際、スピンアウトして創立した会社。ハワードは創設から一貫してハイグレードウォッチのみを作り続けた。ちなみに、創設者にとても有名なデニソンさんという方もいたが、この人はその後イギリスでデニソンウォッチケース製造会社を興した人。

オールドハワードとキーストンハワードの話は以前書いたので繰り返しとなるが、ハワードは1900年代初頭にケースメーカーでおなじみのキーストンウォッチケース社に商標を買われる。これを境に、以降キーストンで生産された時計がキーストンハワードと呼ばれ、商標を買われる前の時計がオールドハワードと呼ばれる。

キーストンハワードはミドルグレードも生産したため現存する時計の数はそこそこあるのだが、オールドハワードはハイグレードばかりであるため数は少ない。このため、オールドハワードは現在もお値段が高く、希少価値の高いものとして認識されている。取引量も非常に少ないので、POCKET WATCH DATABASEにも価格相場が表示されなかったりする。
なお、キーストンハワードの時計も非常に贅沢な造りで品質も高いので、どちらがどうという話ではない。どちらかといえば、同じハワードという名を持ち、どちらも高品質な別メーカーといった感じで捉えられているようだ。

◆ハワード シリーズⅤ(1869 ー 1895)
オールドハワードはシリーズ IからXIIIまである。シリーズⅤ(5)は1869年から1895年まで製造された時計で、Lサイズ(16サイズ相当)と呼ばれる大きさ。オールドハワードは所謂アメリカサイズよりも少し大きめらしいとのこと。
生産数の少ないオールドハワードは市場に出回る数が少ないが、そのほとんどはNサイズだ。次いでかなり減ってLサイズを見かけるといった感じ。


ムーブメントの構成は、さすがに年代も古いのでキーワインド・キーセットとステムワインド・ペンダントセットが主なムーブメントセッティングとなる。また、ほんの少しだけステムワインド・レバーセットもあるらしい。
ムーブメント構成はオープンフェイスとハンティングで、ステムワインド・ペンダントセットのものは全てハンティングムーブメントとのことだ。

また、以前もご紹介したが、オールドハワードでは、ムーブメントの調整に差異化がされており、それがグレードっぽい差異を表す。
  • 調整なし:刻印なし若しくは犬のマーク
  • 温度調整:HEAT&COLD刻印若しくは馬のマーク(または両方)
  • 温度と姿勢調整:ADUSTED刻印若しくは鹿のマーク(または両方)
当然のことながら、上から下に向かって高級かつ高精度。数も少なくなりお値段もお高くなる。

2.実機を見てみよう
◆文字盤

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こーれがね、またこの文字盤程度が良いのよ。ざっと見た限り、秒針周りは汚れてるけど他はキレイでヘアラインらしきものも見当たらない。この時計の正確な年代はデータベースに記録されておらず不明なのだが、出品情報には1895年という記載があった。130年近く前と考えると、よくここまで残ったものだと思う。加えて針もしっかり青色発色してて錆も無し。同モデルの別個体も調べたけど、針もダイヤルも当時の純正間違いなし。これだけでも結構なものだと思う。
あと、ダイヤルの手書きインデックスも見事な物。針の細かな飾りもホント見事。さすがハイグレードのみしか生産しなかったといわれるだけのことはある。

◆ムーブメント
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この時計は15石とのこと。1869年販売開始なので、造りは旧い。プレートタイプは3/4プレートでニッケルムーブメントだ。だが、しっかりと微動緩急針を備え、ジュエルセッティングもレイズドスクリューセットと高級機でよくみられる造りとなっている。
そして刻印を見てお分かりの通り、動物マークはお馬さん。温度調整が行われている証である。微動緩急針付近にもHEAT&COLD刻印がわかると思う。残念ながらセンターホイールに劣化も見られるが、総じてキレイなムーブメントだ。

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テンプは温度補正のバイメタル切りテンプを使っている。

なお、さすがにこの年代かつ数も少ないオールドハワードとなると、カタログらしきものを見つけることはできなかった。

さて、入手の経緯でも書いたが、この時計Lサイズムーブメントを腕化したもの。16サイズ相当を腕化って何の冗談よそれ。着けることはできるがほとんど使えないとはそういう意味だ。この時計のケースサイズはなんと48mmもあるのだった。アメリカ人のやることはワイルドである。

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メーカー・モデル:E.Howard&Co. Boston Series V
製造年:1888年1月19日
モデル:Model1869
グレード:Series V
生産数量:不明
キャリバーナンバー:63197(手巻)
サイズ:N(16サイズ相当)
石数:15石
ムーブメントタイプ:ハンティング
ムーブメントセット:ペンダントセット
振動数:18,000/時(5振動)
ケース:腕時計ケース
文字盤:シングルサンク・エナメル文字盤