前回MKSの側開閉機を購入し挑んだスクリューバックの裏蓋開封。固着していた時計の裏蓋はどうやっても開けることができなかった。

また、実際使ってみたことと、数々の先人の諸先輩からのコメントによるアドバイスで、この2爪の側開閉機は、一般的なものでありながら、かなり難ありであることが理解できた。

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この開閉機は、持ち手部分と作用点が大きくずれており、しかも工具・ムーブメント共に固定がままならないことから、裏蓋へ力を均等に加えることが甚だ難しいのである。
それでも普通に締めてある裏蓋なら問題はないのだが、固着しているような場合は、ヘタをすると金属の鋭利な爪で裏蓋をガリッとやってしまう危険性が非常に高い。
つーか、やらずに済ます方が難しいだろう。それだけでも悲しいのに、もしその鋭利な爪で手のひらをひっかいたりすると病院送りだ。

また、たまにキングセイコーの裏蓋に付いてるメダリオンに穴が空いてたり、引っ掛けたりしたのを見かける。なんで手の甲に付く箇所であんなえぐれた損傷するんやと思ってたが、実はあれ、この工具でしくじった成れの果てなのではないか。

さて、こうした場合最も適切な工具は、以下2点を満たすものかと思う。

①ムーブメントをガッチリ固定できること
裏蓋が固着している場合、ムーブメントを固定できないと厳しい。ハンドパワーのみでは力不足。

②裏蓋の切り欠きに掛ける爪は裏蓋に密着させつつ真上から力を加えられること
裏蓋に刻まれた切り欠きから、爪が外れないように真上から押さえつつ力を加えられること。これ最重要。

ド素人が失敗せずに作業を行うためには、適切な工具を使用することが非常に重要だ。このため、おさーんは新たに工具を手に入れることにした。

上記2つを満たす格好な工具がBergeonからNo.5700-zという型番で販売されている。しかしこれがプロ用なので15万円以上と完全に死ねる。
だが、Bergeon 5700 で検索をかけると、出てくる出てくる似たようなやつが。全く見た目そっくりなパチで中華製のコピー工具だ。

Bergeonのコピー品は、他にスタッキングツールなどいくつかあるのだが、結構見た目しっかりしており中華製としては割と高価。あまりにも安いのは敬遠するが、これくらいなら逆に多少の信用もおけるかもしれん。

というわけでひとつ手に入れてみることにした。

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※AliExpressより画像引用、まぁ見た目限りなく本物(Bergeon No.5700-z)っぽいパチ

AliExpressで見るとパチも数種類あるようだが、お店によって送料が数百円から数千円とめちゃめちゃな値付けなのがなかなか。その中からまともそうなお店を選んで発注した。例によってクレカは怖いのでPayPal決済だ。送コミお値段約1万円と本物に比べるととんでもなく安価だが、見た目ちゃんとしてそうなのでこれでいってみよう。

きっと本物が高すぎるんだよあれ。そうそう販売も見込めないから、鋳物型起こして作れば原価は相当なもんだろうから仕方ないけど。

そういえばロレックスとチュードル(今はチューダーか)用アタッチメント付きを買ってしまった。そんなのいらんと思うけど、差額2,000円なかったからまぁええか。

というわけで発注後首を長くして待つこと2週間、ようやくブツが届く。開封してみると、細部のつくりは中華クオリティだし、傷もあったりと褒められたものではないが、何せ値段が値段だ。だがヘッドや筐体はしっかりしてそうで使えそうな雰囲気。

開封早々だが、早速どうしようもなかった スクリューバック裏蓋に挑んでみよう。サンプルをセットして、位置を調整後にクイっとな。

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いや驚き。なんとまぁあれほど固くてなんともならなかった裏蓋が簡単に緩んで拍子抜けである。適切な工具を使うとこんなに安全で簡単かよ。割とお値段も張るが、こうしたものは必要経費と割り切るべきもの。何より傷もつけず安全かつ簡単に開封できるのはありがたい。
蓋が緩んだあとは、台座から時計を外して手なり開閉器なりでくりくり回せばよい。
おさーんは懐中時計のスクリューケースを緩めるボールを使って緩めた。

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この開閉機、パチとは言えなかなかのおすすめアイテムである。参考になるかもなので少し紹介しておこうか。

◆筐体
仕上げはヒドイがしっかりしている。上についている大きなハンドルは押さえると軸ごと押し込めるようになっており、蓋を開ける際は上から押さえ、ヘッドを時計に密着させてハンドルを回す。ただこれ、ハンドルと筐体の間にあるスプリング弱いな。もうちょっと固いものに交換したい。
筐体には木材の台座が付いている。端っこ欠けてたり傷あったりと安定の中華クオリティ。


◆ヘッド

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ヘッドは脱着可能、ヘッドはパーツで売っており交換可能。Bergeon製の本物もそうなっているので、ここだけ本物に交換が可能かと思う。
ケースに引っ掛ける爪はアタッチメントになっており取り換え可能。6種類の爪が付属。ただしはめ込み精度が結構難でここらあたりが中華クオリティ。
両側に付くダイヤルを回すと爪が開閉する、これでムーブメントに引っ掛ける爪位置を合わせる。
爪位置を合わせたら、黒いネジ回して爪位置をガッチリ固定。横のダイヤルを回しても開閉しなくなる

◆台座
台座にはムーブメントの固定具の取付穴があり、ここに時計の大きさに合うアタッチメント式固定具をはめて時計を固定する
9,11,13,15,17,19,20,22のサイズ(リーニュか?)の固定具(硬質プラっぽい)が付いており、時計の大きさに合わせて台座にはめ込む、ここも精度が中華クオリティでめっちゃ抜けにくいのあり。固定具が金属でないのがグッド。傷つかんしね。
台座の横にあるダイヤルを回すことで大きさに合わせ固定具間の幅調整が可能。

◆バイス
台座に用意されている固定具より大きいものや、4点で保持し固定した方が安定するもの向けにバイスが付いている。バイスは台座に開けられた穴に取り付ける。バイスにも固定具が4つ付いており、これでムーブメントを保持する。固定具は台座のツマミで幅の調整が行える。
パチなので本物にも同じものがある。

◆ロレックス・チューダー用アタッチメント
ロレックスやチューダー用の裏蓋は細かな縦溝が裏蓋外周に切られており、これにオープナーを咬み合わせて裏蓋を回すようだ。これ用のアタッチメントが付属している。ただ、これ精度とか問題ないのかがかなり不安。だが、使うことはないのでまぁいいか。こちらもBergeon製の本物にもある。

以上が簡単な説明。造りはともかく大変よくできている。つーか、Bergeon製の本物が優れているってことだ。なお、AliExpressでの購入価格は送料込み$90ちょいだった。
これでスクリューバックの裏蓋開閉捗るわ。

一応MKSの裏蓋開閉器はそのまま持っておくことにするが、今後使うことはないだろう。
このところいろいろあって、MKSの企業姿勢がおさーんの中でダダ下がりである。残念ながらあそこの工具を今後買うことはないかもしれない。

なお、今回ご紹介した工具以外にもいろいろと買い漁っていたりする。既に工具の泥沼にはまりつつある。というわけで、また機会があれば工具のご紹介をしてみたい。
でも時計工具は絶対やばいんだって。時計より全然高いんだって。

というわけで工具の沼にはくれぐれもご注意を。